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2024年8月1日発行 No.674

「幸せなら手をたたこう」は平和の誓い

                            金田 佐久子


 幸せなら 手をたたこう
 幸せなら 手をたたこう
 幸せなら 態度でしめそうよ
 ほら みんなで 手をたたこう

 60年前、坂本九さんが歌って大ヒットし、今でも多くの人に親しまれている「幸せなら手をたたこう」。この歌をテーマにした『漫画 幸せなら手をたたこう 誕生物語』(西岡由香・作、木村利人監修)が今年の春、いのちのことば社から出版されました。
 作詞者の木村利人さんと、作詞の経緯、その背景にある信仰と平和への思いについては、あまり知られていないと思います。この本の最後に木村さんが書かれている「感謝の言葉」からこの歌が生まれた物語を少し紹介したいと思います。
 “…この歌は、僕が大学院生の時の1959年に作詞した歌なのですが、これまで途絶えることなく、世代を越えて多くの皆さん方に歌っていただいていることは、とても嬉しいことです。…
 農村復興のボランティア・ワークのために初めてフィリピンに行った時、太平洋戦争の最中に日本がフィリピンに軍事侵略して、約百万人のフィリピン国民の命を奪ったという悲惨な状況について何も知らなかった僕は、現地で初めてその事実を知り、言葉を失いました。仲間の中には戦争で家族を失い、日本への憎しみと憎悪の直中にあった人もいたのです。炎天下の「トイレの穴掘り」労働奉仕活動などを通して親しくなった友人のラルフ君が、ある日「リヒト! 君が、ここに来て戦争したわけじゃない。お互いにこれから、絶対に武器を取って戦わないことを誓おう。平和な未来を作りだそう。ボクたちはトモダチなんだ!」と語りかけてくれたのでした。お互いに手を取り合って「どうも有難う!」とハグした時のことが忘れられません。
 戦争で家族を失ったラルフ君が「赦しと愛」を態度に示してくれたことに感動しました。その夜の礼拝で読んだ英文の旧約聖書・詩篇47篇の「さあ、皆さん、喜んで手をたたきましょう。大声を上げて主をほめたたえましょう」(リビングバイブル訳)、という聖句からインスピレーションを受けて、この歌を作ったのでした。曲は、ボランティアの宿泊所だったルカオ小学校の校庭で、子どもたちが楽しく歌っていたジェスチャー付きの曲です。…”
 さらに、歴史をること、その憎しみを乗り越えて赦す、人々とになりつながる、界とつながる、この四つのメッセージを合わせた「知・愛・輪・世(しあわせ)」を態度で示しましょう、と木村さんは呼びかけています。大いに共感しました。
 それは私も約30年前、ワークキャンプでフィリピンに行ったことがあったからです。マニラから数時間の郊外で、集会所建設のお手伝いをキャンプの仲間と一緒にしました。その中で、現地の方から「自分の祖父は日本軍に殺された。祖母は『日本人を恨んではいけない』と言っていた」と聞きました。私は申し訳なく、何も言うことができませんでした。1週間ほどのワークキャンプの滞在でしたが、子どもたちとも楽しく遊び、一緒に現地の人々と働けたことは貴重な体験でした。
 「幸せなら手をたたこう」、この歌の誕生の物語と歌に込められた平和のメッセージが、多くの人々の心に届きますように。


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