天神山の磐座。別名、興喜山(よきさん)
|
奈良県の長谷寺へと参拝する街道の正面に円錐形をした標高455メートルの山がある。山そのものが御神体の神奈備山で、天照大神が降臨したと語り継がれている古代信仰の山だ。
地図には天神山と記されているが、別名、興喜山(よきさん)とも大泊瀬(おおはつせ)山とも呼ばれている。
この山の原生林は天然記念物に指定されていて、古来から樹木の伐採は一切禁じられている。
写真は長谷寺から天神山を眺めた景色で、樹高40メートルほどの銀杏の巨木がひときわ目立つ。もう少し秋が深まるころになると、山全体が紅葉に包まれるたいへん美しいところだ。
さて今回の岩くら探検はこの天神山の頂上をめざすことにしよう。 |
ふもとの磐座たち
|
|
天神山のふもとには興喜天満神社がある。現在の神殿は1818年に再建されたものらしい。すぐ近くの長谷寺のにぎやかさに較べると、たいへん古びれていて境内は参拝者もなく静かだ。ちょっとさびしいかも。
境内に磐座があった。
鵝形石、沓形石、掌石、といった名前がつけられた巨石が3つ祀られている。
それぞれに、天照大神、天児屋根命、太玉命という神名がつけられていた。このお名前どこかで聞いたことがありませんか。そう、天の岩戸開きのときに登場してくる神様たち。
天照大神が降臨したとされる山にふさわしい名前の磐座で、先ほど説明した銀杏の植わっているところには弟神のスサノオ神社があるところを考えると頂上が楽しみだ。
天満神社のお祭りは「初瀬天神祭」として10月20日にあり、参詣者で今もにぎわっています。 |
中腹の磐座
|
さっ登ろう。
しかし、この山へ入るのは、はっきり言って不可能だと思う。以前に、ここの磐座を知っているという人に道を聞いて来たことがあったが、聞いていた話のところに道がなく、ここら辺りではないかと見当をつけて山を登っていったが、迷子になりそうだったので引き返したことがある。
しかし今回は総勢8名である。そのうえ道案内人もいる。
と思って登り始めたのだが、出だしからつまづいた。なんと案内人のひとも登山口がどこかわからないというのだ。聞くと、少し前までは道があったのだという。少し前というのはどうやら
10年前のこと……。
「道わかるかな。遭難しないかな」と、案内人。
結局、頼りない案内人を先頭に、わいわいがやがやと山のふもとの道を行ったり来たりと往復するはめになった。しばらくして小枝に登山道とかかれた小さな木札をみつけて登ることになった。もちろん道はないので一行は藪の中へと突入。
またこんな道のない山を登って行くのかと思うとしょんべんちびりそう。案内人はすごくいいかげんで頼りないし、道なき道をどんどん進んでいく。
きっと頭が壊れているんですね。それでも必死でついていって獣道らしきところをどんどん登っていくと、人が歩いたと思われる道が現れたり、不意に消えたり。どういうわけか案内する人がぼくの後ろを歩いていたり。だいじょうぶかいな、ほんとにもう。生きて山から出られへんで。
と思いつつも、登り始めてから30分ほどの中腹にて磐座を発見! 高さは2メートル、幅1メートルほどで岩が三層に積み重なっていた。もしくは一枚岩が自然に割れたのかも。 |
ようやく頂上
|
その後も道なき道を進み、「道が消えました」というと、「真っ直ぐ進めー!」
それで真っ直ぐ進んでいくと崖になっているところに出くわし、「崖ですが」というと「真っ直ぐ進めー!」
やっぱりこの案内人あたま壊れている。それでもなんやかんやと迷いながら50分後には頂上らしきところに到着。
そこには、おおっ。石の鳥居や、狛犬なんかが今もしっかりと残っていた。話によると、ここがお祀りされなくなってから30年以上たつとのこと。しかしあと数年後には崩れてなくなってしまうのだろう。
鳥居をくぐると巨石が点々と崖にむかって並んでいた。まるで恐竜の背のようだ。スパッと鋭利な刃物で切ったような岩もみられた。方角を計っていたのだろうか。何をしていたのか今となっては判らない。
岩に神さまが降りるという民話が各地に伝わっている。この山には太陽の神、天照大神が降りたとされている。その磐座がある場所を、太陽の道が通っている。何か符合するものがあるように思うのだが。
後日談になるが、ここは天神山の頂上ではないらしい。この磐座に来る途中で二股に分かれるところがあって右側にルートをとると頂上で、左側を進むとここに出るようだ。 |
天照大御神が降臨した磐座
|
右の写真の説明。
鳥居をくぐると、1メートル程の岩が5つ、等間隔に恐竜の背びれのように並んでいる。あきらかに人工的でなんらかの意図があるようにみえる。
少し登ったところに狛犬があり、その狛犬から一番大きな頂上の磐座を見上げたところ。岩がかみそりのように切られて、通路のようになっているのがわかる。
コンパスで方角を計るのを忘れたが、写真の光線から判断すると磐座の向きは西のようだ。 |
COPYRIGHT(C)2001 SEIMEI KOBAYASHI/MIDORI MIYAZAKI.
AII RIGHTS RESERVED.無断転用、転載を禁じます。
|
|
もどる□□□トップへ |