日吉大社の境内を歩いていくと、右側に奥の院へと登る山道がある。八王子山、牛尾山、小比叡山などと呼ばれている。381メートルの山の、山頂近くに磐座(いわくら)がある。だいたいにおいて磐座のある山は低山で円錐形なのが多いがここもその一つだ。
八王子山と名がついたいわれは、金巌石に、神さま八人の皇子を連れて降ったからだという。
広くて整備された道をくねくねと登っていく。山道にしてはずいぶん広い道なのには理由があって、お祭りのときに神輿が、山頂の磐座(いわくら)と麓の神社の間を上り下りするからだそうだ。
道は傾斜がきつくてちょっと疲れるが、四十分も歩けば山頂に着く。
登りつめたところの正面に大岩がどどーんと行く手を立ち塞ぐようにして立っている。自然と見上げる格好になる。
高さ幅とも六メートルほどで右側は絶壁だ。岩の面は鏡のように平らに削ぎおとされている。岩の手前には向かい合わせで二棟の拝殿が立っている。
右側の拝殿が牛尾宮で大山咋神(おおやまくいのかみ)が祀られている。左側が三宮宮で鴨玉依姫神(かもたまよりひめのかみ)が祀られている。
大岩を背にして眼下に広がる琵琶湖の絶景を眺めようと振り返ったが、拝殿に視界をふさがれて見えない。しかたなく見えるところへ移動する。
一番最初に目に飛び込んできた風景、それは琵琶湖の対岸にある近江富士である。乳房のようにこんもりとした稜線がたいへん美しい。
地図には三上山と載っている。ここからだと東の位置にあたる。 すると、日の出の時に近江富士から金巌石の方を見れば、この鏡のような大岩に太陽の光があたり、反射することになる。
きっときれいに輝いていたことだろう。それで、こがね岩と名前がついたのかもしれない。
追記
日吉大社の境内にはたくさんのお宮がある。そのお宮を囲むように水路が張り巡らされている。その流れる清水のきれいなことは格別。 |