神の波動を感じて生きる@
美内すずえ/月間波動 2002/12月号
伊勢神宮での講演会「倭姫さまの道」より/文・構成 宮崎みどり

日の神アマテラスと倭姫(ヤマトひめ)の心
今、新たな国づくりの時

 
崇神天皇の時代、天変地異が頻発し疫病が蔓延した。人心が乱れ、多くの死者が出、人口が約三分の一となった。皇居の中で神(アマテラス)を祭祀している事が(天皇との同殿同床)神の怒りに触れたとのご神託が下った。崇神天皇は世の平安を願い、神を皇居から外に出すことを決めた。

 倭姫命(やまとひめのみこと)は巫女として、神であるアマテラスに仕え、その鎮座地にふさわしい場所を求めて各地を巡行した。四十数年ともいわれる長い旅の末、ようやく神の御心に叶った土地を見つけて遷座した。伊勢神宮の基礎はこのようにして築かれたのである。

 また、倭姫は日本神話のヒーロー「ヤマトタケル」の叔母としても有名な皇女である。美内すずえさんは日本人の底辺に流れる日の神アマテラスと倭姫の心を漫画「アマテラス」「倭姫幻想まほろば編」で判りやすく描いている。

すべての生命の根源となる女神


 アマテラスとは、「天(アマ)=世界を照らす大いなる意思を持った生命エネルギー(母なる女神)」のことであると私は考えています。そのエネルギーを受けることのできる巫女が、オオヒルメとか、ヒミコと呼ばれていたのではないでしょうか。神であるアマテラスは次元が違うのでご自分ではコップ一つ動かせません。そこでアマテラスの心を受けた巫女が手足となって神の御心を正しく感じ取りながら祭祀を行っていたと思うのです。

 倭姫は新しい国づくりのために選ばれた特別の巫女(シャーマン)でした。神の声を聞きながら各地を転々と巡り、神の御心に叶った伊勢の五十鈴の川上にアマテラスを祀る祠を建てました。以来、伊勢神宮は聖地として、2000年間連綿と守り継がれてきたのです。しかしほとんどの若い人はそのことを知りません。

 世界中の国々では自分たちの神話を大切に伝えています。戦後の日本は、自国の神話を大声で話せない時代となり、その結果、若い人たちが全く神話を知らずに成長しています。これはちょっと何かおかしいのではないかと気づいたのです。

 私は日本神話を若い人たちに伝える必要があると思い、その元になっている伊勢神宮のルーツについて調べたいと考えました。誰が伊勢神宮を作ったのか? なぜ、アマテラスのご神霊が伊勢に祀られているのか? そういうことを本格的に漫画に描こうと思ったのです。

巫女やシャーマンになぜ女性が多いのか?
 倭姫は霊力の強い偉大なシャーマンだったに違いありません。私は、巫女やシャーマンになぜ女性が多いのか謎だったのですが、「女性は自分の体内に別の魂を宿す(子どもを孕む)ことが出来るからである」と、ある人に教えられて納得しました。

 妊娠するということは体内に別の魂を呼び込むことです。妊娠と同時に考えや嗜好が変わることも珍しくありません。女性は魂を呼び込みやすい、つまり巫女になりやすい体質を持っているのではないでしょうか。

 そう考えればとても簡単で、すべての女性は巫女であり、誰でも神であるとか先祖の声を聞くことができると考えられます。それは霊能や超常現象などの不思議なことでも特別なことでもなく、妊娠と同じで、ごく自然なことだと思います。

 じつは私も小さい頃からいろいろと神秘体験をしてきました。そして17歳頃から、この世の中のあらゆる出来事は人間の想念が左右しているのではないかと考えました。

 すべての物事はまず始めに人の思いがあってやがて現実に生み出されてくる。つまり戦争も平和も人間の想念が反映して起こるのではないでしょうか。

人類は間違った方向に進んでいる。
 1980年代初頭から、「このままでは地球の未来が危ない!」というメッセージめいたものを切実に感じるようになりました。

 今の世の中を支えている利益追求型の物質文明が本当にこのままでいいのだろうか? 本当に我々を生かしているものはなんなのだろう? 私たち人類はもっと宇宙や自然界と調和して生きるべきではないか? と深く考えました。

 そして同じようなことを感じている人がきっと他にも多くいるに違いないと思い,その人々に呼びかける意味も込めて1986年に「アマテラス」を書き始めたのです。

 当時は見えない世界のことや精神世界のことを書くというのはかなり勇気が要りました。しかし、描かなくてはならないという思いが強く沸き起こり、判って貰える人に伝われば良いと決意して角川書店から連載をスタートしました。また、何かあれば「これは漫画ですから」の一言で済むとも考えました。

倭姫は今もこの国を守っている
 
聖地、霊地に行ってお祈りをすることはとても大切なことだと思っています。私は今までの体験から、聖地や霊地は地球の「霊的生命エネルギー活性の場」と考えているからです。

 倭姫は各地を転々としながら、大和の国が一つに結集できるように命がけで平和を祈ったことでしょう。私たちがいま単一民族としてなんとか一つにまとまっていられるのは、倭姫の祈りとその強い意志のおかげかも知れないと思っています。その倭姫の心を描かなければならないと感じて1993年、「倭姫幻想まほろば編」を書きました。

 私は執筆中に、倭姫は今もこの国を守ってくださっているということをひしひしと心に感じました。時には胸がいっぱいになり、涙があふれて原稿が書けなくなったことが何度もありました。ほとんどの人がそのことに気づいてないのがもったいない気がしています。倭姫さまは今もこの日本を守ってくださっているのだと思います。

一人ひとりに内在するアマテラスの心
 私は神の心とは、大愛(たいあい)「大きな愛」であると考えています。

 戦いで勝ち取った勝利は怨念を残します。倭姫はすべてを許し、時間をかけてお互いを理解しあい、大和の人々が平安に暮らせることを祈って各地を巡行したのではないでしょうか。この倭姫の願いを知ったとき、我々はもっと心を一つにしなければならないと思います。

 どうやって仲良くするか? どうやって一つの国として結集するか? どうやって平和を実現するか? それは大愛であり、友愛であり、大いなる調和の大和心(やまとごころ)なのだと思います。

 日本は戦争をしない国、戦争をしてはいけない国なのです。アマテラスの御心を受けた倭姫はそれを望んでいらっしゃる。

 だれにでも神であるアマテラスの心は内在しています。これからの時代は、個々の人が自らの扉を開いて内なる神を外に出し、新しい時代を築いて行くようにしなければと思っています。争いを止めて、一人ひとりが世界の精神の中枢になり、互いに手を取り合い、世界の模範にならなければいけない時代が到来すると思います。

 いま、男女に関係なく、倭姫の魂を受け継いで地球上に伝えようとしている人々がたくさん現れてきているように私は思っています。新たな2000年にむけて、新しい国づくりが始まる予兆(波動)を感じています。
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