第1回:1994年 4月30日 〜 1994年 5月 5日
 (1)自然について
 パレンケの遺跡は、森林に覆われた小さな山の中腹にあり、自然は残されていますが保護区域のため昆虫採集はできません。初めての中南米で、初めて訪れた場所がここでした。周辺は、西欧文化の影響か、柵で囲まれた牧場が広がっています。パレンケの町周辺には、こんな訳で森林が殆どありませんので、川縁や牧場間のほんの小さな隙間にある緑でしか採集はできません。牧場は、広大な面積を必要とします。それは、植物食に比べて、動物食は1ステップ余計にエネルギーが掛かるからです。効率が悪い分、広大な面積を必要とし、森林を喰い潰しています。文化の相違は、如何ともし難いですが、人が、増えすぎたせいでもあるでしょうか。
 パレンケの町からタクシーで1時間ほどの場所に、アグア・アスルという場所があります。青い水の川が流れていて、休日には、多くの人たちが川遊びにやってくる場所です。奥に行くと人影も少なくなり、緑も豊かになり、美しい自然が待っています。ここには、1m位の大きなトカゲが闊歩し、細長い緑色のヘビが枝の間を縫うように這っていました。
 (2)昆虫について
 パレンケの町周辺のナツツン(歩くと、1時間は掛かる)は、川の両岸のみ森林が細く続いています。リキディケヒメキオビマダラ、ミニヤスマルバネシジミが通り過ぎるとき、驚いて翔び立ち、ゆっくりと舞います。川岸の開けたところには、ヤトロパエカバイロタテハがいます。そしてアルガンテオオキチョウ、マエルダオオヤマキチョウやシロスジタイマイが通り過ぎてゆきます。イフィダマスマエモンジャコウアゲハも時々やってきます。しかしここは、人々の憩いの場みたいで、多くの人たちが水遊びをしているので昆虫採集どころではありませんでした。
 また、町から歩いて1時間ほどの所にチャカ・マスという所があり、周囲は牧場なのですが、その部分だけ少し空間があり、川と疎らな森林があります。川辺には、オオキチョウ、オオヤマキチョウ、シロスジタイマイ、ミナミヒョウモンモドキの仲間がやってきます。そして開けたところでは、シロセセリ、オナガセセリ、キチョウ、ホソタテハ、カバイロタテハが翔び交っています。森林の方へ入ってゆくと、セソストリスマエモンジャコウアゲハ、ポリゼルスマエモンジャコウアゲハ、エラトドクチョウが翔んでいて、大きな青い翅を持ったルリオビタテハが高い木の幹の間を滑空しているのを見ることができました。牧場周辺には、ウラギンドクチョウが強い光を受けて、赤く輝いています。
 トンボもいろいろといて、エメラルドカワトンボの赤紫色の翅は、東洋区にはない美しさがあります。コフキショウジョウトンボに似ているがひと回り大きなトンボや中形のトンボが数は少ないが飛んでいます。
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