第1回:1996年 4月23日 〜 1996年 5月 2日
 (1)自然について
 ギアナ高地と言うと、すぐに鋭く聳え立つテーブルマウンテンを想像するかも知れませんが、実際のギアナ高地は、ベネズエラ南東部からブラジル、ガイアナにかけての標高1000m位の高原状の台地のことです。テーブルマウンテンは、その中の一部を形成しているのに過ぎません。今回、私の行ったところは、シウダット・ボリバルから先のパンアメリカン・ハイウェイに沿ってブラジル国境近くのサンタ・エレナという町までです。最初の宿泊した町は、ギアナ高地の手前で、エル・ドラードという町です。シウダット・ボリバルからエル・ドラードまでバスで約8時間は、これといった森林地帯はない状態で、乾燥した地域です。エル・ドラード周辺にも川は流れていたのですが、やはり草原が多く乾燥した疎林が広がっています。
 エル・ドラードの先1時間もすると登り坂となり、ギアナ高地へと入ってゆきます。この斜面には、森林が生い茂っていて豊かな生物相を育んでいるように思えました(残念ながら行きには、ここを真夜中に通ったため気付かなかった)。斜面を通り過ぎギアナ高地に入ると、また森林は途切れ、草原地帯は続きます。森林は、所々の谷で形成されているに過ぎません。ブラジル国境近くの町サンタ・エレナには、4時間程度で辿り着きます。サンタ・エレナ周辺もまだ、大きな森林地帯はありません。ここは、標高が高いため、朝夕は涼しくて過ごしやすかったです。また、町周辺に森林が少ないのは、西洋文化の一つである広大な牧場のためでもあります。
 (2)昆虫について
 ギアナ高地手前の町エル・ドラード周辺は、余り森林が発達していませんでした。採集地は、いつもの通り勘に頼り足の向くまま歩き、紆余曲折の結果、1時間半ほど歩いて川の辺で採集することになりました。近くには、民家が2件建っていました。川原には、残念ながらチョウは群れてなかったのですが、時々オオキチョウやオオヤマキチョウが通り過ぎてゆきます。午後2時前後には、時々タテラムラサキタテハが一定方向に向かって翔んでゆくのが見られました。でも、大きな集団ではなかったです。川原には、時折セセリチョウが見られる程度でした。開かれた場所には、ここにもエワレテタテハモドキ、アマテアカバイロタテハやキチョウの仲間が見られ、木の幹にはカチカチと音を立てながら翔ぶカスリタテハが2種陣取っていました。そして、時々チャイロドクチョウが翔んでゆきます。川岸の藪の中に入ると数種類のスカシマダラの仲間とイストミアキオビマダラが数多く舞っています。しかしこの場所も、日によっては、余りいなかったりもしました。非常に狭い範囲なのですが、この周辺には、アンチオックスドクチョウ、エラトドクチョウ、ヘレノルモルフォ、オイレウスフクロウチョウ、ヒアリヌスハカマジャノメ、デモフィレクロオビシロチョウ、そしてアンカエウオスアケボノタテハが見られます。エル・ドラード周辺は、余りいい採集地ではりません。
 ギアナ高地にあるサンタ・エレナの町周辺も大きな森林はありませんでしたが3カ所採集できる場所を見つけ歩き廻っていました。
 ホテルから10分位の森林周辺には、ナンベイホソチョウ、ウラギンタテハ、アマティアカバイロタテハ、カスリタテハ、ツマベニオオヤマキチョウ、そして空高くモルフォチョウが翔んでいました(このモルフォチョウは、長い竿を持っていなかったので採ることはできなかった)。狭い森林の中には、数は少ないが2種類のマエモンジャコウアゲハ、スカシマダラ、シジミタテハ、ワラケイドクチョウがいました。ペッレネナンベイホソチョウは、非常に多くいましいた。
 2番目に近い20分位の場所は、森林内なのでマエモンジャコウアゲハ、各種トンボマダラ、ジャノメチョウ、シジミタテハ、モルフォ、カスリタテハが多くはありませんが翔んでいます。大きなルリオビタテハがいましたが、口惜しいけど逃げられてしまいました。ルリオビタテハとは、どうも相性が良くないみたいです。
 一番遠い場所には、40分位かかります。小高い丘の下に広がっている小さな森林帯であり、丘の上の方は、乾燥していて殆どチョウはいませんでした。ここにも2種類のカスリタテハ、各種のシジミタテハ、セセリチョウ、ジャノメチョウと少ないがマエモンジャコウアゲハ、チビシロチョウ、スカシマダラ、シジミチョウがいました。
 セミは、低い場所に止まっている種を、3種ばかり採りました。
 トンボは、意外に種類が多く、1匹チョウトンボに似た仲間がいましたが、残念ながら翅を広げた展翅にはできませんでした。
 やはり心残りは、ギアナ高地斜面での豊かな森林での採集ができなかったことです。
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