煉瓦はこぶ背に日ざかりの波翳す
日ざかりの風山萩にたはむれぬ
向日葵に昼餉の煙ながれけり
茗荷掘るゆふべの母に帰省しぬ
帰省子に月夜の富嶽雲おびず
青垣の夏の夜露にふれにけり
枇杷の蝉かすかに鳴ける逮夜かな
筆かみし朱唇の墨も夜涼かな
すがたみに触りてつらるる蚊帳かな
露しげき夏草の径を明日はゆく
駅馬路や夕立はるゝ鈴の音
雲霧や夏の蝶とぶ箸のさき
藻刈舟ゆきかふ舳かはしけり
紫陽花にたばしる雹や雨の中
雹やみし甘藍畠の日照雨
青々とまびきたばねし唐がらし
凌霄に井戸替すみし夕日影
書肆街の片蔭つたふ我が家路
しろじろと洗ひざらしぬ夏の足袋
箒木に微禄の籬荒れにけり
箒木に秋めく霧の一夜かな