和歌と俳句

松尾芭蕉

めでたき人のかずにも入む老のくれ

水寒く寝入りかねたるかもめかな

瓶破るるよるのの寐覚哉

はつゆきや幸庵にまかりある

初雪や水仙のはのたはむまで

花皆枯て哀をこぼす草の種

月白き師走は子路が寝覚哉

酒のめばいとど寐られぬ夜の

きみ火をたけよき物見せん雪まろげ

年の市線香買に出ばやな

月雪とのさばりけらしとしの昏

旅人と我名よばれん初しぐれ

一尾根はしぐるる雲かふじのゆき

京まではまだ半空や雪の雲

星崎の闇を見よとや啼千鳥

寒けれど二人寐る夜ぞ頼もしき

ごを焼て手拭あぶる寒さ

冬の日や馬上に氷る影法師

ゆきや砂むまより落よ酒の酔

鷹一つ見付てうれしいらご崎

夢よりも現の鷹ぞ頼母しき

さればこそあれたきままの霜の宿

麦はえてよき隠家や畠村

梅つばき早咲ほめむ保美の里

先祝へ梅を心の冬籠り