狩衣の袖うら這ふほたる哉
堂守の小草ながめつ夏の月
山颪早苗を撫て行衛かな
石切の鏨冷やしたる清水かな
白蓮を切らんとぞおもふ僧のさま
手すさびの團画かん草の汁
川狩や帰去来といふ声す也
水晶の山路ふけ行清水かな
石工の飛火流るるしみづ哉
青梅に眉あつめたる美人哉
ででむしやその角文字のにじり書
関の戸に水鶏のそら音なかりけり
網打の見えずなり行涼かな
蝸牛何おもふ角の長みじか
古井戸や蚊に飛ぶ魚の音くらし
うは風は蚊の流れゆく野河哉
あま酒の地獄もちかし箱根山
愚痴無智のあま酒造る松が岡
水の粉のきのふに尽ぬ草の菴
水の粉あるじかしこき後家の君
昼を蚊のこがれてとまる徳利かな
わくらばの梢あやまつ林檎かな
鮎くれてよらで過行夜半の門
おろし置く笈に地震なつ野哉
腹あしき僧こぼし行施米哉