口切や五山衆なんどほのめきて
口切や小城下ながら只ならね
炉びらきや雪中庵の霰酒
西吹ばひがしにたまる落葉かな
袴着て鰒喰らう居る町人よ
落葉して遠く成けり臼の音
舂臼の心落ちつく落葉かな
時雨るゝや簔買ふ人のまことより
釣人の情のこはさよ夕しぐれ
鷺ぬれて鶴に日の照る時雨哉
初雪や消ればぞ又草の露
初雪の底を叩けば竹の月
ゆふがおのそれは髑髏歟鉢敲
口切や北も召れて四畳半
うづみ火や我かくれ家も雪の中
老を山へ捨てし世も有に紙子哉
埋火も我名をかくすよすがかな
繋ぎ馬雪一双の鐙かな
雪の戸に格を当てゆく木履かな
冬ごもり燈下に書すとかゝれたり
うづみ火や終には煮る鍋のもの
ろふそくの涙氷るや夜の鶴
こがらしやひたとつまづく戻り馬
こがらしや畠の小石目に見ゆる