潅仏や蔦の若葉もあゆみそめ
葉に成し木は何思ふ仏生会
けしの花我身わすれし月日哉
けし咲や蒔たその手もおそろしき
そのわかれ浮草の花けしの花
花に針心知りたき茨かな
うのはなの闇に手のつく若葉哉
卯のはなは日をもちながら曇りけり
卯の花や垣の結目も降かくし
うへが上にさす欲もなきあやめ哉
音ばかり筧失なふあやめ哉
降らいでもぬるる名のあるあやめ哉
沢にあるうちは名たたぬ菖蒲哉
風さけて入口涼し菖蒲哉
むかしにも似かよふ影やかきつばた
卯の花の影三つよつやかきつばた
行春の水そのままや杜若
水の書水の消したり杜若
面影のかはるを果やかきつばた
萍の身はまたおもしかきつばた
短夜や旭にあまる鶏の声
橘の香やその空はへだつとも
紫陽花に雫あつめて朝日かな
こぼれてはもとの水なり紅の花
ふみそむる鹿の子の道や紅の花