遺兒と寝て一と關Xたる冬座敷
ふるさとの闇こそしづめ大晦日
天闢くごとく寒雲きえゆけり
こたへなき雪山宙に労働歌
酪農の娘が恋しりて初日記
しろがねの潮たる初日濤をいづ
地靄してこずゑにとほく春鶫
遺兒愛す情おのづから花ぐもり
新暖のとげとげしくて山椒籬
雨あしのさだかに萌ゆるよもぎかな
桃林はみづえをそろへ麦青む
翁草日あたりながら春驟雨
霊前に供華沈丁の夜のかをり
小降りして鴎に春ゆく清見潟
富士かくる雨に桃さく田畔かな
春雁をとどむるとしも五湖の雨
やまのはの樅に瀬音やはるかすみ
春雪に子の死あひつぐ朝の燭
僧とあふ坂の好日梅の花
さきはひのもとも身近く春耕土
もろもろの霊に有情のはなぐもり
梅雨の雲幾嶽々のうらおもて
菜園の雨にきこゆる夏ひばり
雨鬼鳴きてくもる菜園柘榴さく