新年の井に鹽盛りて年行事
冬山に枯木を折りて音を聞く
川浪の霰光りに川千鳥
荒れ藪の鐵線花咲く欅の木
盆過ぎて蝉鳴く天の雲明り
山裾のありなしの日や吾亦紅
庭におく深雪の石にみそさざい
鳶翔けて霞に高む山の形
芭蕉碑をなでてぬかづく極寒裡
星合の後山を拂ふ巽風
山風の温微にゆるる鐵線花
夕山の焚火を蔽ふ杣二人
金扇の雲浮かしたる冬の翳
南方の空のむら雲鶏頭花
寒天に大晴れしたる花柊
泥鰌とる鷺のむらがる初時雨
花活にむらさき褪せしあやめかな
極寒の天晴れて咲く柊かな
秋立つと守護する溪の水の彩
鹽漬けの梅實いよいよかりき
六月の人居ぬ山の大平ら
百合の露揚羽のねむる真昼時
竹落葉午後の日幽らみそめにけり
水神に笹生の時雨小降りがち
ゆく水に紅葉をいそぐ山祠
誰彼もあらず一天自尊の秋