短夜や茄子に恋ひ寄る芋の蔓
大木を伐りし疲れや蚊遣たく
柿わかく花柚老木や時鳥
花入れて数にも見ゆる金魚かな
灯に映えて金魚赤さや風雨の夜
朽臼をめぐりめぐるや蝸牛
若竹や廻る月日に朽つる臼
我が庵の臼は榻なり夏の月
松明揚ぐれば峡中赤き夜振りかな
朽臼に又一年や合歓の花
松風に咲きつくしけり神の蓮
抜く草の根の皆きれて暑さかな
笹たてゝランプ釣りたる踊かな
児は畦に松明振れる田植かな
夏痩や古りて小さき峰の月
夏痩のほつれ毛をかむ朱唇かな
夏痩の青梅好む病かな
夏痩や幾日旅笠の紐のあと
天橋の松が見え来る海月かな
薪負うて雨乞の人つゞきけり
蚊火燃えて起居浮べり椎の宿
麦秋や頬を地につけて風呂火焚く
山寺の大炉の蓋や麦埃