和歌と俳句

村上鬼城

黒うなつて茨の実落つる二月かな

西行の御像かけて二月寺

初午や神主もして小百姓

初午や枯木二本の御ん社

とけて浮く氷の影や水の底

春寒や掘出されたる蟇

山寺に蒟蒻売りや春寒し

竹うごいて影ふり落す余寒かな

仙人掌の角の折れたる余寒かな

冴返る庵に小さき火鉢かな

冴返る川上に水なかりけり

吼えて遠くなりけり猫の恋

いがみ合うて猫分れけり井戸の端

野を焼くや風曇りする榛名山

野を焼くやぽつんぽつんと雨到る

蕗の薹二寸の天にたけにけり

蕗の薹や桐苗植ゑ棒の如し

が香や広前にゐて鶏白し

や隣へ逃げる薮つづき

としごろの娘二人や若布賣

蕎麦打つても三月五日かな

白酒やもらひためたる小盃

春の雪麦畑の主とく起きぬ

春雪や小倉山下の京菜畑