榎本其角
越後屋に衣さく音や更衣
青簾いづれの御所の賀茂詣
卯の花やいづれの御所の賀茂詣
夏酔や暁ごとの柄杓水
涼しさや帆に船頭のちらしがみ
夏の月蚊を疵にして五百両
帆をかふる鯛のさはきや薫る風
夕立に独活の葉広き匂哉
夕立や法華かけ込あみだ堂
夕立や田を三囲りの神ならば
何を音にすぽん鳴らん五月闇
蝙蝠や宇治の晒にうす曇り
浴衣着て瓜買ひに行く袖もがな
身にからむ単羽織もうき世哉
夜着を着てあるいて見たり土用干
水うてや蝉も雀もぬるる程
うすものの風情日に張る団哉
蚊遣火に蚊屋つる方ぞ老独
沓作り藁打宵の蚊遣哉
夕すずみよくぞ男に生れけり