末子の丈へ跼みては夏賞でにけり
若燕倉中の酒未だ醸れず
子のための又夫のための乳房すずし
臥せてある菅笠へ田の声通ふ
早乙女や街道の砂利いたがりつつ
帰省の卓目のある魚のさまざまに
緑蔭のつどひに参じ風下に
水平座さがして陋屋に西瓜置く
腮引いてをみなの欠伸百合蕾む
夕日を前鵙の仔迫らず迫られず
母の手恋し揉んでッと押す盆団子
淑やかや磨きしごとき新小豆
内赤き古椀に盛り新小豆
向日葵や登る人来れば登り坂
低き雷主の血は血として若かりし
きりぎりす舌の根打つて誓言す
炎天やこと待ちとほす墓の群
燈籠や可憐になりては友等死せり
鐘の音や箸待つのみの夏料理
我が歯一つ末子に示し露へ投ぐ
島椿学ばざりし明眸吸ふごとし
青簾疲れし者なき代の如く
励める顔節あるごとき汗流る
青富士やもの高めあふ夏景色
夏富士や長女野の家宰領す