亡き人に肩叩かれぬ衣がへ
眠けまだ去らぬ目とぢぬ衣がへ
女房おかめ亭主ひよつとこ夏まつり
てつせんの紫くらきこのうれひ
ゆうれいにむだないろけのあけやすき
老鶯やいよいよ雨はくらけれど
老鶯に湯槽あふるる温泉なりけり
おもふさま散らかりし灯の涼しさよ
風鈴の舌ひらひらとまつりかな
晩涼やふと人声の来ては去り
晩涼や月いついでし立咄
朝月のうすれつくせし立夏かな
衣がへ看護づかれの見ゆるかな
銀行のマッチもメモも薄暑かな
夕かげのにはかに冷ゆる黄薔薇かな
六月や寝ざめかすめし鳩のかげ
花菖蒲まづむらさきのほぐれたる
あけがらすみじか夜ないてすぎしかな
明易やカーテンの襞まづ生きて
ねがへりのらくにうてたる蛍かな
さらさらと夜のものかるき蛍かな
それとなき病のすすみ風薫る
羽抜鳥のこの身の末をみよとこそ
単帯看護づかれの見ゆるかな
百合白し余生をいかに送るべき