つらら折れるころ向く机かな
木がらしや人家の絶えし畝の跡
栗うめて灰かぐはしや夜半の霜
竹の葉の垂れて動かぬ霜ぐもり
きざ柿のしぶのもどれる霜夜かな
わびすけにみぞれそそぎて幹白し
わびすけのくちびるとけて師走なる
枇杷の花母娘と住みてなまめきし
笹鳴の渡りすぎけり枇杷の花
庭石の苔を見に出る炬燵かな
茎漬や手もとくらがる土の塀
茎漬やさざんか明る納屋の前
塩鮭をねぶりても生きたきわれか
菊枯れて牡蠣捨ててある垣根かな
焼芋の固きをつつく火箸かな
ほほゑめばゑくぼこぼるる暖炉かな
地図をさし珈琲実る木をおしへけり
豆柿の熟れる北窓閉しけり
飛騨に向ふ軒みな深し冬がまへ
寒餅やむらさきふふむ豆のつや
寒餅や埃しづめるひびの中
侘び住むや垣つくろはぬ物の蔓
草の戸や蔦の葉枯れし日の移り
草枯や時無草のささみどり
けふよりぞ冬をかこへり池の鴨