彩色の岩屋三尊菌生れ
落鮎の揖保の流れに子を孕む
啄木鳥や玉垣やぶる音止まず
白菊に紫の憑く日ごろかな
落人の墓に落穂を仏花とす
河豚食へば太笛の船出でゆけり
四天王白き障子に映えませり
びるばくしや目細う時雨ごころかな
補聴器のぴいぴいと鳴く年の暮
しぐれともゆげともわかぬ夜の湯浴
磔像と数千万の霜柱
石に彫る帰天の月日霜柱
沼寒し手賀の魚拓の墨のいろ
懐手して説くなかれ三島の死
屑入の山羊は飽食慈善鍋
紀の丘の早生豌豆に初日かな
胸の火の消えざるかぎり老の春
わが耳を苦にせずなりて老の春
雪折のとどまりがたき谺かな
夕栄にはじきとばされ寒雀
荒磯のしぶきのごとく咳きにけり
應擧寺大雪塊のしりぞかず
たんぽぽに塩屋の庇触れにけり
おへんろを引き具してをる出家かな
花の寺髯の関帝みそなはし