斧あてし枝の切り口冬に入る
もろもろの石冬に入る雅印また
虻よんで倦むこと知らず石蕗の花
とろろ汁吾に齢の高さなし
沖は昨夜寒かりしとぞ沖を見る
残る世のけふのさむさにめをさます
投函の後ぞ寒星夥し
寒星はただ天に寄る海の上
こがらしにすぐとさからふ夜の木々
こがらしや昴ほぐるることもなく
昴星楼閣のごとくしぐれけり
はらはらとしぐれて馭者の五角星
柵に沿ひゆけばしぐるる鉄軌かな
石山も地上も霰はねかへる
船の燈が最も哀れ雪の暮
オリオンの出て間もあらぬ枯野かな
寒き夜のオリオンに杖挿し入れむ
咳すれば暮るる景色の鮮明に
赤き実を垂りて南天提げ帰る
オリオンが枯木にひかる宵のほど
水撒きし舗道にうつれ除夜の星
南天を挿す除夜十時十一時