梅雨凝つてとび来し蝶の美しき
青雲のたなびきうごく梅雨かな
押しよするさまに日ざすや梅雨曇
梅雨晴やとつて放ちし草蜉蝣
五月雨にぬれ細りたる雀かな
梅一つ夕べに落ちし音苔に
古家や畑のゆすらの花盛
巣燕の羽の紫紺や土間の梁
若松の芯旺んなる田植かな
更けし灯に真白なる蛾ぞ人恋し
積繭に吹かれ入りたる蛍かな
塊りて紗にうごき居る蛍かな
籠の紗をもえつつのぼる蛍かな
森の木をはなれとびけり夕蛍
巌苔をむしり游ぶや瀞の鮎
深瀞に游なる鮎の群
夜明けたる湖上に消えぬ蚊喰鳥
蝙蝠の啼く音や落つる草の上
蝙蝠や夕べの色の燕子花
入日澄む雲の端に浮く蚊喰鳥
磐石をもつて橋とす夏の蝶
水無月の大鯛生けるごときかな
蜻蛉の彩羽隠れし青田かな
よく晴れて遠雷や雲の中
雷のきらひなことを妻知れり