草原へ投網なげ干し麦の秋
麦秋や星あるごとき松の上
大空のかまでに晴れて麦の秋
ほの曇して大空や麦の秋
明易や戸出の溝板踏めば鳴る
洗ひ髪ひろげ寝のかや明易き
天を蔽うて泰山木の明易き
短夜のふとかずかずの思ひぐさ
短夜のひとあり朴の花を活く
夫人来ておどけゆきしも梅雨入かな
褐色の蝶とび出す梅雨入かな
地球儀に照る青空や梅雨入窓
梅雨入いたくはれて群鴿空翔り
日をよけて柏の花の下かげに
麦秋の門の内外の青梅かな
にが梅と何やら小さき実と落ちて
なぶる子としりて啼きけり鴉の子
なぶる子と見て巣をかばふ鴉かな
桑の実は食まぬものかや鴉の子
風吹きて逆立したり鴉の子
親に随いて飛ぶ子鴉よ山若葉
親鴉来し子鴉の翼かな
子鴉は翼紫紺にひからせぬ
桑に蘆に人沈みゆく行々子
牛に乗つて人蘆辺より行々子