よりそひて老い花しげき野菊かな
なきながら家鴨流るゝ野菊かな
蓮の実のわかきみどりや水に影
寺の井に竹簀の蓋や銀杏の実
葉の中の太枝に日や銀杏の実
大鹿やのそりとゐたる露葎
秋の人呆然として灰の中
朝顔の実をむすびゐし地震かな
声かれてなくかなかなや地震の秋
秋晴や鳴動いたる富士の底
下町の大火の上の秋の月
月を来し犬咬へゐし人の骨
只一つ白朝顔の咲きし庵
芒の葉さゝくれ欠けて筋強し
秋晴のまことの色を草の穂に
病人に枕上みなる秋の暮
穂すゝきの茎むらさきや霧の中
熟柿もつ乳児見つつ打つ砧かな
花二つ集り輝ける大黄菊
コスモスは遥かの垣や菊畑
俄かなるよべの落葉や菊日和
我墓やわが来しのみの下駄の跡
掌うら足うら後へかへす踊かな
城かべに松の暗さや盆の月
旅に居て仏恋しや盆の月