寒鯉の魚籠にひかりて月ありぬ
夕焼けて寒鮒釣も堰の景
寒鮒の釣れて水垢もとのまま
梨棚や潰えんとして返り花
古町やけふの日和に蘆刈れり
枯蓮の水のそこひの二日月
北風や多摩の渡し場真暗がり
茶の花や野づかさつづき多摩郡
見るかぎり枯れ立つ桑と鵙の贄と
桑畑の鵙が見てゐる焚火かな
いぶかしく焚火あがれる端山かな
千鳥なく闇に火あげてわたし守
古町の篁垂るる小春かな
追羽子に舁きゆく鮫の潮垂りぬ
蜑が妻二日の凪に麦踏めり
海の門しぐるる岩にみさごかな
下総の丘の低きに年木樵
獅子舞は蜑が門辺に笛吹ける
獅子舞は入日の富士に手をかざす
元日や旅のめざめに濤の音
伊豆の海初凪せるに火桶あり
牡丹雪小やみもなくて初芝居
追羽子や音朗らかの庭隣り
山鴉鳴く静けさを機始
渚辺や蜑も見てをる弓始
めでたさや恵方詣の酔ひ戻り