和歌と俳句

日野草城

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朝風のさざなみ寒きさくらかな

水晴れて若木のさくら咲きそろふ

踏みしむる白きくびすや春の泥

襟あしのごとし薄闇の木蓮

勤労の服はたるめり夕ざくら

墓の影墓にもたれて暮れ遅き

春の星灯さぬ部屋の窓あきぬ

梅の朝ちちくさき子にからまるる

鉢梅の二つの花の花ざかり

焚火の穂ひらりひらりと春寒し

朝光に睫毛のながき余寒かな

春浅し鐵欄石に影を据ゑ

つまさきに波のしのべる花の闇

花吹雪稀に行く人の眼にすさぶ

落花の陽射しあらはれて斜めなり

うすいろのつつじ三輪祇王寺に

風立ちて身を揉む竹や花ぐもり

竹曇り花もくもりぬしづかなる

俯いて来て落椿踏まざりき

落椿ありしかば樹をふりあふぐ

花ぐもり鳴瀬に高き橋を踏む

樫の葉や花より移す眼に青き

大原やしづかに曇る花とわれ

花蔭のしづかに香のきこえけり

斑の椿うるはしと見つつ香きこゆ