矢橋乗る娵よむすめよ春の風
燕来てなき人問ん此彼岸
ゆたゆたと畝へだて来る雉子かな
雉子追ふて呵られて出る畠哉
葉隠れの機嫌伺ふ桑子哉
髪結ふて花には行ず蚕時
華稀に老て木高きつ ゝじ哉
蚕飼ふ女やふるき身だしなみ
御影供やひとの問よる守敏塚
菜の花やよし野下来る向ふ山
猪垣に余寒はげしや旅の空
川の香のほのかに東風の渡りけり
東風吹や道行人の面にも
下萠や土の裂目の物の色
やぶ入や琴かき鳴す親の前
親に逢に行出代や老の坂
出替りの畳へおとすなみだかな
花守のあづかり船や岸の月
すみけりな椀洗ふ水もありす川
付まとふ内義の沙汰や花ざかり
ふらこゝの会釈こぼるゝや高みより
うぐひすの声せで来けり苔の上
うぐひすや聟に来にける子の一間
うぐひすや葉の動く水の笹がくれ
江戸へやるうぐひす鳴や海の上