陰陽師歩にとられ行冬至哉
野の中に土御門家や冬至の日
雨水も赤くさび行冬田かな
たのみなき若草生ふる冬田哉
木がらしや柴負ふ老が後より
今更にわたせる 霜や藤の棚
腰かける舟梁の霜や野のわたし
鶤の起けり霜のかすり声
苫ぶねの霜や寐覚の鼻の先
行舟にこぼるゝ霜や芦の音
耻かしやあたりゆがめし置火燵
埋火に猫背あらはれ玉ひけり
埋火にとめれば留る我が友
火を運ぶ旅の巨燵や夕嵐
淀舟やこたつの下の水の音
草の戸や巨燵の中も風の行
摂待へよらで過けり鉢たゝき
暁の一文銭やはちたゝき
雪やつむ障子の帋の音更ぬ
見返るやいまは互に雪の人
宿とりて山路の吹雪覗けり
空附の竹も庇も雪吹かな
うつくしき日和になりぬ雪のうへ
降遂ぬ雪におかしや蓑と笠