和歌と俳句

炭 太祇

かはほりや絵の間みめぐる人の上

蝙蝠やけいせい出る傘の上

麦挨樗にくもる門辺かな

ひるの蚊の顔に鳴り行広間かな

かやり火のうたてのこるや夜の儘

とりにがす隣の声や行ほたる

寺からも婆を出されし田植

白雨のすは来るおとよ森の上

雨あれて をふむ山路かな

隣には木造のぼる新樹

草の戸や竹植る日を覚書

漣にうしろ吹る ゝ田植かな

さみだれや夜明見はづす旅の宿

掃流す橋の埃や夏の月

角出して這はでやみけり蝸牛

かたびらの無理な節句や傘の下

松陰に旅人帯とく暑かな

松明に雨乞行やよるの嶺

夕立や扇にうけし下り蜘

あつきひや明放す戸のやらんかた

鵜ぶねみる岸や闇路をたどりたどり

かゝる日や今年も一度心太

松かげにみるや扇の道中記

汗とりや弓に肩ぬぐ袖のうち

はや鮓の蓋とる迄の唱和かな