和歌と俳句

三橋鷹女

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跼まれば我も夜更の蟋蟀

馬ほどの蟋蟀となり鳴きつのる

かまつかは燃え急ぎ吾は縫ひ急ぐ

渡鳥見てゐる吾子も見てゐるか

隣り家は紫苑のさかり我が家も

菜園のほとり芙蓉を咲かしめぬ

子守唄きこえくるなり夜の霧

くちびるに夜霧を吸へりあまかりき

赤まんま墓累々と焼けのこり

敗戦のただ中に誰ぞ咲かせし

朝霧に夜霧にむせて絣著て

秋の燈に哀れ独歩の書を読める

白し菊より白きゆめ一つ

骨肉や秋の没日に相容れず

あねいもと性の違へば秋日も二つ

かなしめばとて秋雲とどまらず

蟲の音のまつはる髪を梳き梳ける

十六夜の外に出てこころつまづきぬ

秋日寒む逢へばおどけて人痩せて

かなかなや母を負ひゆく母の里

コスモスの戦後の花影踏むなよ君