夏まけとかくしがたなくやせにけり
萱草や昨日の花の枯れ添へる
金粉をこぼして火蛾やすさまじき
金魚大鱗夕焼の空の如きあり
柄を立てて吹飛んで来る団扇かな
牡丹の花に暈ある如くなり
くつがへる蓮の葉水を打ちすくひ
橋裏に吸ひ着いてゐる蓮広葉
向日葵の葉の真黒に焦げたるも
影遠く逃げてゐるなる砂日傘
砂日傘小犬がくくりあるばかり
門川の野茨の或は匂ひ来て
行人の背にある蠅や麦の秋
手をば刺す穂麦の中を来りけり
罌栗咲けばまぬがれがたく病にけり
洗髪乾きて月見草ひらく
洗髪乾きて軽し月見草
庭に出て夕餉とるなり月見草
羅をゆるやかに着て崩れざる
花深く煤の沈める牡丹かな
牡丹の葉を起しつつ開き行く
花に葉に花粉ただよふ牡丹かな