水澄むやとんぼうの影ゆくばかり
はにかみて拾ひし木の実見せくれぬ
前山の霧晴れて行くはやさかな
霧晴れて現れそめし山かたち
さまざまの紅葉の山の重なりて
雨晴れてきて対岸の紅葉山
秋の日の滝の上より射し来る
一列に芒や萱を岐け岐けて
渡り鳥かすかに見えて過ぎてゆく
末枯の真菰に沿へる畦もあり
浦安のもどりの道の秋祭
捨てし茶の光りてをりぬ月の石
石に置く菱の実雫にじみけり
白木槿蘂の紫うつりをり
野分して紫苑の蝶々けふはゐず
鉦叩がんぴの花の下あたり
ふとさめて静かな夜なり鉦叩
いびつなる秋海棠の広葉かな
塀高く秋海棠の小庭かな
草じらみ花さきそめて径せまし
ひとゝころ柳散り敷く道となる
月の暈なかばは雲にかくされて
電車まつ秋雨傘を深々と
見えてゐて鵙鳴きをりぬ大欅