秋海棠母を大事の家のさま
わかつものおほかた愁ひ秋灯
櫨紅葉北上光り去るところ
一雨の暗さ強さよちちろ蟲
提灯を吊す古釘秋祭
雨いつか菜畑に晴れ十三夜
十三夜花茎長きゼラニューム
流灯会陸奥の夜潮の早さかな
秋の暮消ぬがに小さき紅雀
手直しのはじめの秋の白襖
さびしさの花野踏ましむ火山礫
芒ぞと早や吹かるるを子にも見せ
宵闇の真つ向にして雁の声
山粧ふ幾日とてなき泊りかな
思ひさへ鳴く鈴蟲にはばかられ
老をかばふ言葉ばかりに法師蝉
曼珠沙華漁夫過ぎてより昏れ果てぬ
膝掛や無月の縁の川の香に
団栗が洗ふ障子の水を打つ
子守とはときにうつろに秋暮るる
全山の紅葉八甲田巌と持す
たづぬとて紅葉の山のただかたへ