和歌と俳句

中村汀女

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窓辺にて人のひろげし時雨傘

船が吐く煙の中に冬鴎

冬海の入り込んで居る貨車だまり

ひたすらに纏ひて破るる外套かな

枯蔓を引けば離るる昼の月

来かかりし歳末街の賑へる

寒菊にかりそめの日のかげり果つ

ねんねこに母子温くしや夕落葉

音しげく我にさからふ落葉かな

橋に聞くながき汽笛や冬の霧

おはぢきを詰めたる箱か母師走

歳晩の新橋たもと掘りかへす

橋裏の波の暗さよ寒鴉

橋裏をくぐりしものへ寒鴉

風邪床にぬくもりにける指輪かな

影法師髪みだれたる風邪気かな

咳をする母を見あげてゐる子かな

もの賣のすれちがひつつ寒の雨

起き出でて咳をする子や寒雀

寒燈に母と子供のうなじかな

寒鴉ついばみながらかあと啼く

寒梅に赤いマントを着て詣づ

煙出づ冬木空なる煙出

短日や汝がつけし煙草の火