和歌と俳句

後藤夜半

小さなる幟の音もあきらかに

さそひ立つ涼み床几の舞子たち

牡丹にざんざ降るなる園生かな

短夜のをのこをみなや蜑が宿

国栖人の面をこがす夜振かな

篝屑水棹にかかるかな

合邦ケ辻の閻魔や宵詣

誘蛾燈駅夫の窓のかたはらに

からたちの花のほそみち金魚売

金魚玉天神祭映りそむ

祀りある四谷稲荷や夏芝居

麦の穂を描きて白き団扇かな

篝守漕ぎ移りくるかな

牛飼のかんばせ稚き祭かな

路地裏を四条通のすゞみびと

ひねもすの牡丹の日の沈む園

道のべに牡丹散りてかくれなし

僧に蹤き巫女に蹤き鹿の子かな

さし覗く舞子の顔や立版古

人形の宿禰はいづこ祭舟