ただみね
たぎつ瀬に根ざしとどめぬうき草の うきたるこひも我はするかな
とものり
よひよひにぬぎてわがぬる狩衣 かけておもはぬ時のまもなし
とものり
東路のさやの中山 なかなかに なにしか人を思ひそめけむ
とものり
しきたへの枕のしたに海はあれど 人をみるめは生ひずぞありける
とものり
年をへて消えぬおもひはありながら 夜の袂はなほこほりけり
貫之
わが恋はしらぬ山路にあらなくに 迷ふ心ぞわびしかりける
貫之
紅のふりいでつつなく涙には 袂のみこそ色まさりけれ
貫之
白玉と見えし涙も 年ふれば からくれなゐにうつろひにけり
みつね
夏虫をなにかいひけむ 心から我も思ひにもえぬべらなり
ただみね
風ふけは峯にわかるる白雲の たえてつれなき君が心か
ただみね
月影にわが身をかふるものならば つれなき人もあはれとや見む
ふかやぶ
恋ひ死なばたが名はたたじ 世の中のつねなき物といひはなすとも
つらゆき
津の国の難波のあしの めもはるにしげき我が恋 人しるらめや
つらゆき
手もふれで月日へにけるしらまゆみ おきふし夜はいこそねられね
つらゆき
人しれぬ思ひのみこそわびしけれ わが嘆きをば我のみぞ知る
とものり
ことにいでていはぬばかりぞ みなせ川 したにかよひてこひしきものを
みつね
君をのみ思ひねにねし夢なれば 我が心から見つるなりけり
ただみね
命にもまさりて惜しくある物は 見はてぬ夢のさむるなりけり
はるみちのつらき
梓弓ひけばもとすゑ我が方に よるこそまされ こひの心は
みつね
わがこひはゆくへもしらずはてもなし 逢ふを限り思ふばかりぞ
みつね
我のみぞかなしかりける 彦星もあはですぐせる年しなければ
ふかやぶ
今ははや恋ひ死なましを あひ見むと頼めしことぞ命なりける
みつね
頼めつつあはで年ふるいつはりにこりぬ心を 人は知らなむ
とものり
命やは何ぞは 露のあだものを あふにしかへば惜しからなくに