和歌と俳句

涼し

涼しき灯すずしけれども哀しき灯 万太郎

涼しさや熱き茶を飲み下したる 虚子

晩涼に臥しゐし髪の砂払ふ 誓子

芭蕉の旅路森へ抜けけん巌すずし 草田男

晩涼の燈のかたまるはこころそそる 誓子

聖母子像動く時計のありて涼し 草田男

をみな等も涼しきときは遠を見る 草田男

石手寺の廻廊涼し山の蝶 立子

電車迅く涼しや顔のはためきて 誓子

夜涼の燈一列島も陸もなし 誓子

涼しくて寄る海廊の朱の柱 誓子

仏壇に先祖こみあふ涼しさよ 双魚