いく度か 参る心は かつを寺 ほとけの誓 たのもしきかな
高砂の 尾の上の鐘の 聲きけば 今日の一と日は 暮れにけるかも
つの國の なにはのことは いざ知らず 木の下やどに 三人ふしけり
夢の世に 又夢結ぶ 草枕 寝覚淋しく 物思ふかな
しをりして 行く道なれど 老いぬれば これやこの世の なごりなるらん
旅衣 野山をこえて 足たゆく 今日の一と日も 暮れにけるかな
つれづれに ながめくらしぬ 古寺の 軒ばをつたふ 雨をききつつ
よしや君 いかなる旅の 末にても 忘れ給ふな 人の情を
都鳥 隅田川原に なれ住みて をちいこち人に 名やとはるらん
草枕 ねざめ淋しき 山里に 雲井おなじき 月を見るかも
伊夜日子の を峰うちこす つづらをり 十九や二十を 限とはして
ますらをや 共泣せじと 思へども けぶり見る時 むせかへりつつ
十日あまり 五日はたてど 平坂を 越ゆらん子らが 音づれもなし
うみの子を をしと思はば みたからを うちはふらさず いつくしみませ
老い人は 心よわきものぞ み心を なぐさめたまへ 朝な夕なに
日ぐらしの 鳴く夕方は わかれにし 子のことのみぞ 思ひ出でぬる
天雲の よそに見しさへ 悲しきに をし足らはせし 父のみこはも
白雪は 千重に降りしけ 我が門に すぎにし子らが 来ると言はなくに