君が世はたかのの山にすむ月の待つらむ空にひかりそふまで
うごきなき君がみむろの山水にいく千代法のすゑをむすばむ
あす知らぬけふの命のくるるまはこの世をのみもまづ歎くかな
かばかりと恨みすてつるうき身ほど生れむ後の猶かたきかな
立ちかへり思ふこそなほ悲しけれ名は残るなる苔の行方よ
新古今集・雑歌
わくらばにとはれし人も昔にてそれより庭の跡は絶えにき
残る松かはる木草の色ならですぐる月日も知らぬやどかな
旅ごろも着なれの山の峯のくも重なる夜半を慕ふ夢かな
新古今集
こととへよ思ひおきつつ濱千鳥なくなく出でしあとの月影
面影の身にそふ宿に我まつと惜しまぬ草や霜枯れぬらむ
かへりみる雲より下のふるさとに霞むこずゑは春の若草
わたのはら浪と空とはひとつにて入日をうくる山の端もなし