明けぬるか有明の月はかたぶきて賀茂の河原に千鳥なくなり
たらちねの昔のあとと思ふにも頼みぞわたる松のをのかげ
ももしきやみかきにならぶ筍の末の世までも神のまにまに
松のもと千歳の鶴の夜半のこゑ亀のをやまにさぞかよふらむ
あはれにも苔よころもとなれなれてつゐにはしたに朽ちむとすらむ
月見ればなぐさめがたし同じくは姨捨山の都なりせば
ゆきかへりなれし都のしのばれて音もなつかし賀茂の川波
わが袖にくらべもみばや宮城野の木のした露はげにやしげきと
関守はすぐしやれども清美潟こころのとまる波路なりけり
久しくも聞きわたるかな葛飾や真間のつぎはし苔生ひにけり
ももつたふやそしまかけて見渡せば空こそ海のきはめなりけり
入江漕ぐ小舟になびく蘆の穂は別ると見れどたちかへりけり
隅田川ふるさと思ふ夕暮れに鳴くねも添ふるみやこどりかな
山里はぬしをばおきて瀧のおとも心細さのすむにぞありける
長岡や落葉ひろひし山里に昔をかけて尋ねにぞ行く
あはれとはみおやのかみも照らさなむ昔の人をしのぶ心を
夢路をぞはかなき世には頼むべき思ひあはする方もありけり
春の立ち年の暮れぬとかはれどもまた世の常と見るぞはかなき
祈りおきし心のうちを御手洗の末にあひ見むことぞ嬉しき
君が代は賀茂の社の姫小松とかへり花も咲かむとすらむ