和歌と俳句

崇徳院

闇のうちににきてをかけし神あそびあかほしよりや明けそめにけむ

千載集・神祇
道のべの塵に光をやはらげて神も仏の名のるなりけり

千載集・賀
吹く風も木々の枝をば鳴らさねど山は久しき声聞ゆなり

亀あそぶ入江の松にぬる鶴は三千代重ぬるものにぞありける

ひとたびも聞きしみのりをたねとして仏の身とぞ誰もなりぬる

名をだにも聞かぬみのりを保つとていかで契りをむすびおきけむ

世の中になほ有明の尽きせずと説けば心の闇ぞはれぬる

千載集・釈教
誓ひをば千尋の海にたとふなりつゆも頼まば数に入りなむ

おしなべて昔ととけるのりなくば色に心や染みはてなまし

かきくらし雨降る庭のうたかたのうたてほどなき世とは知らずや

はかなさはほかにもいはじもも歌のそのひとかずはたらずなりにき

沖つ波たちわかるとも音にきくなかゐの浦に舟とどめすな

都いでて幾日になりぬ東路の野原篠原露もしみみに

いはがねのこりしく山を越え来ればわが黒駒はきになりにけり

あまのすむ浜の藻屑をとりしきてここにとまると妹しらめやは

千載集・羇旅
狩衣袖の涙にやどる夜は月も旅寝の心地こそすれ

千載集・羇旅
松が根の枕も何かあだならむ玉の床とてつねのとこかは

罪知れる人や住むらむ川瀬には簗きりすてて網のめも見ず

さし櫛もつげのはなくてわぎもこがゆふげの浦をとひぞわづらふ