和歌と俳句

紀貫之

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石上布留の中道なかなかに見ずは恋しと思はましやは

敷島の大和にはあらぬ唐衣ころもへずしてあふよしもがな

色もなき心を人にそめしよりうつろはむとは思ほえなくに

いにしへになほ立ちかへる心かな恋しきことにものわすれせで

はつかりのなきこそわたれ世の中の人のこころの秋しうければ

夢とこそいふべかりけれ世の中にうつつある物と思ひけるかな

あす知らぬ我が身と思へど暮れぬまのけふは人こそかなしかりけれ

朝露のおくての山田かりそめにうき世の中を思ひぬるかな

ほととぎすけさ鳴く声におどろけば君に別れし時にぞありける

色も香も昔のこさににほへどもうゑけん人のかげぞ恋しき

君まさで煙たえにししほがまのうらさびしくも見えわたるかな

かつ見れどうとくもあるかな月かげのいたらぬ里もあらじと思へば

ふたつなき物と思ひしを水底に山のはならでいづる月かげ

沖つ波たかしの浜の浜松の名にこそ君を待ちわたりつれ

難波潟おふる玉藻をかりそめのあまとぞ我はなりにべらなる

雨によりたみのの島をけふゆけど名にはかくれぬものにぞありける

葦鶴の立てる川辺を吹く風によせてかへらぬ浪かとぞ見る

さきそめし時より後はうちはへて世は春なれや色のつねなる

思ひやる越の白岳しらねどもひとよも春にこえぬ夜ぞなき

君がさすみかさの山のもみぢばの色 かみな月しぐれの雨のそめるなりけり