和歌と俳句

鞆の浦 とものうら

万葉集・巻第三・挽歌 旅人
我妹子が見し鞆の浦のむろの木は常世にあれど見し人ぞなき

万葉集・巻第三・挽歌 旅人
鞆の浦の磯のむろの木見むごとに相見し妹は忘らえめやも

万葉集・巻第三・挽歌 旅人磯の上に根延ふむろの木見し人をいづらと問はば語り告げむか

古集
海人小舟帆かも張れると見るまでに鞆の浦廻に波立てり見ゆ

古集
ま幸くてまたかへり見むもすらをの手に巻き持てる鞆の浦廻を


八一
ふねはつるあさのうらわにうちむれてしろきあひるのなくぞかなしき

憲吉
鞆の海のふるき島かも巖にのこる遠世の潮のあとは寂びたる

一月の汐鳴りさすが鞆の浦 野風呂

寒鳶や鞆の早汐搏ちうてる 野風呂

金雀枝や日の出に染まぬ帆のひとつ 秋櫻子

金雀枝や鞆の津見せぬ朝の靄 秋櫻子

日焼男の諸声めぐる船出唄 秋櫻子

魚島の大鯛得たり旅路来て 秋櫻子

鞆の津の沖ゆく帆あり明易き秋櫻子

海と空と残照おなじ秋の暮

残照や島には島の百舌鳥鳴ける