「あの集団が来る前に、ウィスキー博物館(有料試飲コーナーあり)に行くよ、かまたんっ!」

「ガッテンだっ!」

 林の中の濡れた散歩道を無駄に凛々しく駆けるかまたんと凪しゃん。

「まってー、まってー」

 カメラが雨に濡れないよう気をつけながら、ブログのネタに困らない代わりに突飛な行動をする被写体を追いかけるまぁこしゃま。

 たちを遥かに置き捨てて、うさはウィスキー博物館にシュビーン!ほほほ、二足歩行の人類が四足で地を駆るうさにかなうと思っているの!文句があるなら福岡空港へいらっちゃーい♪(←まだユってまし)

 博物館の中にはウィスキーとニッカの歴史を解説する展示がありまちた。あったよーな気がいたしましぃが、うさはよく覚えてましぇん。ポットスチル(蒸留器)のオブジェをえいっと乗り越えて、壁面のスタンディングスタイルの有料試飲コーナーへ、こんにちはーっ!

「う、ううっ、嬉しい……っ!」

 四月にナミダを飲んで不参加だったかまたんが感涙に咽びながらメニューをぱらりと捲りまし。壁一面に飾られた銘酒のボトルが落ち着いた琥珀色に輝いて、眺めるうさたちの胸をきゅーっと締め付けまし。

「試飲会場でもアップルワイン込みで3杯飲めますから、ここでは飲みすぎないようにしましょう。どれにします?」

「えーっと、どうしよう。四月に姉が買ってきてくれたシェリー樽はすっごく美味しかったんですよねー」

「あぁ……、シェリー樽……」

 お、どーちたの凪しゃん。しょんな、悪事を見つかったよーな顔をして。

「四月に、実は直売所で、まあこさんにどれが美味しいんでしょうかって聞かれて」

「ああ、凪さんまお勧めだったんですね」

「知ったかぶりをして、シェリー樽が一番、間違いありませんって答えてしまって」

「美味しかったですよ。間違いありませんでしたよ」

「味は確かに、そうなんですが、よく見ずに勧めたら値段が凄くって……」

 ナニをイマサラゆっているのやら。ウィスキーのシェリー樽がお高いのはうさがカワユイのと同じくらい当然、当たり前のコトでちょ。

6000円を軽く越えていて、まぁこさんの甲斐性にはナンてことないお土産だったでしょうが、しまった最初からトバシすぎた、と……」

 ひそかに後悔ちていたらしいワガヤのロクデナシはシングルカスクを、かまたんもシングメカスクのシェリーを、どっちも一般には流通が少ないモノでしが、一杯ずつショットでいただいて、乾杯ー。シングルカスクとは、『モルト原酒の中から特別に選ばれたひとつの樽のウイスキーを、簡単なろ過のみでそのまま瓶詰めしたウイスキー。その樽の量しか同じ味わいのものはなく、数量限定品となります。』というモノでし。お代金は一杯ごとにお支払いしゅる西部劇スタイルでし。

 うきゅ……。うさも、飲みたい……、でし……。

 でもうさ、今日、お小遣い持って来てない……。

 うさは(一応)飼い主である凪しゃんのアンヨに頭突きちまちた。酔っ払いには通じましぇんでちた。かまたんのズボンの裾を引っ張ってみまちた。ウィスキーに夢中で気づいてもらえましぇんでちた。しくしく。

 振り向けば悲しいハンドルキーパー・まあこしゃまが、展示品(撮影可)をばしゃばしゃ、撮影ちておらりまし。

 とてとてとて。

 ぽてん。

 あのぉ……、まあこしゃま……。

「なあに、うさちゃん?」

 あのね、うさね、今夜、まあこしゃまに添い寝いたしまし。

 ぐっすり安眠出来るように、ねむねむの子守唄も歌いまし。

 だから、あのね……。うさに100円、貸して欲しいの、デシ……。

「いいわよ、はい。足りなかったら言ってね」

 優しいまあこしゃまはしょう言ってくりたの。ありがとーっ!うさは100円をぎゅっと握ってカウンターー。おにぃしゃん、VSOPをロックでくだしゃーいっ!

「かしこまりました」

 丁寧におにぃしゃんは、ロックにチェイサーまで添えて、かわゆいうさに注いでくだしゃいまちた。ホントに100円でちた。凪しゃんとかまたんが夢心地で飲んでいる工場限定のシングルカスクは350円でし。原価というか、まぁ商売ではなく、販促の一部でさりている有料試飲でしが、本当にしゅてきでし。うっとり……。

 うっとりちながら飲み干して、ニッカの歴史をちっとお勉強。戦後の余市は自然に恵まれ過ぎていて色々と大変だったみたい。二連発銃に凪しゃんは吸い寄せられていまちた。こりは竹鶴しゃんが実際に使っていた銃で、仕事の合間には狩に行っていたんだって。野生動物との共生は今でも難しい問題でしが、イノシシが農作業中の婦人を襲って大怪我をさせめることが時々起こる田舎祖たちの凪しゃんは、駆除の必要性というものを骨身に染みてまし。射撃は趣味でもありましが。

「ほぉ、なかなか……」

 竹鶴しゃんが実際に獲ったヒグマしゃんと写った写真もありまちた。手記も展示ちてあって『二発目でやっとしとめた。あぁ怖かった』みたいなことが書いてあって、その正直さはヤラセじゃないと思われマシ。五体満足な若いものは有害駆除に出て行かねばならない、というよーな話は案外、遠い日の出来事ではありましぇん。

「この竹鶴さんはサントリー山崎工場を作り上げた人でもあります。流通コストを考える会社と自然条件を重視する竹鶴さんとの間で意見の対立があって、まあ、ありがちな物別れになったということでちた。

 まあこしゃま、しゅごい、物知りーっ!

「四月に来てから色々と調べましたから」

 ふふふ、と微笑むまあこしゃま、しゅてきぃーん!

「勉強になりました。さてもう一杯……」

 かまたんが見学を終えて再び、カウンターに立ちに行こうといたしまし。

 だめっ!無料試飲会場に行って、買い物をしてから帰ってきましょう!

 それに今日は、この後で北海道ワインの試飲と買出しにも行くのよ!だめーっ!

「……ヴぁぅ……」

 濁音の不平の声をあげながらもしぶしぶ、かまたんはカウンターではなく出口に向かってくりまちた。ほっ。三人と一羽は試飲が行われている建物へ、とててて。

 広い会場にはそりなりの人がいらっちゃいまちた。うさが最初に来た時は爆弾低気圧の真っ最中でお客さんはうさ一行だけだったのでしが、今回はしょんなことごじゃいましぇん。三連休だけあって4月の時よりも多いかな。

「お、鶴がある」

 きらりと光った凪しゃんの視線と呟きを受けてカウンターの中のおねいしゃんが。

「余市もございます。こちらも是非」

 とお声をかけてくりまちた。やさちーぃ!

 高級ブレンドウィスキーの鶴17年、シングルモルトウィスキーの余市10年、アップルワインが試飲に並んでまし。そりぞり一杯ずついただけまし。ソフトドリンクは余市のほっぺ、ウーロン茶、そりにお水が飲み放題なの。氷も用意ちてありまし。三人居るから三杯ずつ、ずらりと並んだ中から多めに入っているグラスを頂いて、そりを二人と一羽で我会うでし。えへへ。余市はちょうどブリキのバケツのよーな容器からグラスに注いでいるところで、うさが多いのを欲しいなぁってじーっと見ていたら、さっきのおねいしゃんが『にっこり』笑って多めに『こぼして』くりまちた。きゃうーん、うさ、嬉しぃーん!

 ちなみに。

 鶴17年は、700ml で9645円。シングルモルト余市10年は、700ml で4715円。お金のことを詳しくユうのは品がないかもしりましぇんが、うさうさ、心の底から嬉しくて満足でし。うきゅーん!

「……ジュースが美味しいなぁ……」

 余市のほっぺ、というリンゴジュースを飲んでいるまあこしゃまの切ない呟きを聞こえないフリで、あぁおいちぃー。

「私、ホントは味がよく分かってなくて、ブレンドの水割りが好きなんですよー」

 と、鶴の17年を同量の『たっぷりの』水で割って、氷を一個、浮かべて凪しゃんが飲んでまし。ツウはシングルを生でヤるものらしいでしが、しょんでさしゅがに余市はロックで飲んでまちたが、学生の頃から『響』の水割りが好きだったトカ。レミーも水割りで頼んでよく怒られていたとか。なぁんて贅沢でイヤンな学生でちょう。しょんなイヤンな学生が大きく(?)なって、こんな悪い大人になったのでしねっ!

 しゃてでは、別棟の販売所へ行きまちょう。んちょんちょ、籠をうさうさ、お持ちいたしまぁし!かまたん、ナニを探しているの?

「シェリーのシングルカスクはどこー?」

 はいはい、こっちでしよー。気軽にご案内ちたうさは、無造作に季語に入れられる瓶に、驚愕っ!

 かっ、かかか、かまたん……。

「なぁに、うさ?」

 そり、買うの?

「買うよーん」

 当たり前じゃない、というカンジでお返事をさりてちまううさ。ううう、と頭を抱えてしまううさ。しょのままヨロヨロまあこしゃまの方へ行くと、まあこしゃまはアップルワインの瓶を手にしたり戻したり。

「お土産向けの小さめサイズ瓶を買っても本数が増えるとやっぱり重たいなー。アップルワインの瓶、けっこう重い。『みなみ』の大将はウイスキーが好きだから買って行きたいけど、飛行機は手荷物で機内に持ち込まないといけないから今回は諦めようかなー」

 まあこしゃまは、しょんな葛藤の真っ最中でちた。

 が。

「纏めて送っちゃえば。かまたんの分も」

 悪魔の囁き、きたーっ!

「……そうですね」

 優しいまあこしゃまにとって切り札になったのは、『かまこたんの分も一緒に送ればいい』ということだったと思われまし。吹っ切れたまあこしゃまのお買い物は素晴らしい勢いでちた。アッパレと、うさは見守りまちた。

「これとこれを、発送お願いします。あ、こっちも一緒に」

 どかん、という量に、閉鎖ちていたレジをひとつ、専用に開けていただいて係りのシトがご対応ちてくりたの。その総量は、妹・かまんよりも、姉・まあこしゃまが多かったんだけど。

「お土産用の袋は何枚、おつけしましょうか?」

「四つ、いえ、五つお願いします。

「はい、分かりました。こちらのお客様は?」

 だけど。

「いりません」

 きっぱり答えたかまたんに、うさはムネキュン、店員しゃんはメをぱちくり。きっぱり自家用、というか自分用。凛々しくて、しゅてきーっ!

 ふきゅきゅとうさは喜んで、しょんで売店でソフトクリームを買ってもらいまちた。昨日のアイスと同じよーに三人でぺろぺろ、むしゃむしゃ。こりからの総本山・参拝に備えて体力をつけておかないとね!

「それでは、小樽に帰りますー」

 町営駐車場に停めていたお車に戻って。

「いぇーい」

「れっつごー」

 ちょっと酒臭い車内には幸福な二人と一羽、しょちてワインに心を燃やす一人が乗り込んで、総本山へと向かったの、でーし♪