『浮雲』(1955年) G-3 NEW 2026.1.29
BS日本映画専門チャンネルで1月と2月の計3回4Kデジタル修復版が放送の『浮雲』。
冒頭、ゆき子(高峰秀子)が富岡(森雅之)の家を訪ねて、その後二人が歩く推定ロケ地については
G-1(本ページの下にコピー)、G-2及びYouTube旧作日本映画ロケ地チャンネルにて紹介した。
富岡の家は東宝撮影所から祖師ヶ谷大蔵駅「祖師谷通り」のどこかだろうと考えていたが
この度「成城映画散歩」(白桃書房 2017)の著者で、親しい知人の高田雅彦氏から
富岡の家の推定場所2案の情報提供をしていただいた。
以下、高田氏の推定理由など。
まずは推定場所@Aのグーグル地図2枚。左=拡大、右=全体 住所=東京都世田谷区砧8丁目
推定場所@Aの現在の撮影写真(高田氏提供)。下記写真(上)=推定ロケ地@+祖師谷通り航空写真1947 下記写真(下)=推定ロケ地A+同航空写真
航空写真画像提供=鈴木俊保氏


ロケ場所推定理由=高田雅彦氏
・4Kデジタル修復版の映像を観ると、家に差す光線の具合からカメラは北を向いて撮影しているようです。
ゆき子(高峰秀子)は南(東宝撮影所)→北(祖師ヶ谷大蔵駅)へ歩いてきたということになり
家のある場所は私が推測した@かAでほぼ間違いないと思います。
・鈴木俊保氏提供の航空写真1947を観ても、推定ロケ地前の道を挟んだ反対側(東側)は一面の畑
でしたので、故石田勝心監督の証言とも一致します。
・この辺りが畑だったことは早坂文雄の葬儀の模様を紹介した書物に
「家の南側は一面の畑だった」との記述があることからも確かです。
・日の差し方を見ると、撮影された時間は夕方ではなく、昼前から午後過ぎあたりと推測されます。
・(推定ロケ地写真の)問題点は、@Aとも角に電信柱があることです。
電信柱は他の旧作映画のロケ地のように、あまり位置が変わらないことが多いのですが
『浮雲』には映っていません。
・いずれにしても「祖師谷通り」の中で道の東側に畑があり、西側に家があるところは
この2ブロックしかないので、@Aのいずれかに富岡の家のロケ地があったのは間違いなさそうです。
・参考までに、下の写真の青丸=当時の成瀬監督邸の場所です。
『めし』のセット・デザインのもとになった家とも言われています。
右隣は有馬稲子邸、その右隣は早坂文雄邸となります。

<参考>『浮雲』G-3のベースとなるG-1からの一部抜粋。
映画の冒頭で、ゆき子(高峰秀子)が富岡(森雅之)の家を訪ねるシーン。
表札には「渋谷区代々木上原1-56番地」とある。
おそらく誰もがこれは撮影当時(『浮雲』公開は1955=昭和30年1月15日なので撮影は前年の1954=昭和29年)の
代々木上原のどこかの住宅の外観のロケーションだと思うだろう。管理者もそう思っていた。
実は、この富岡の家及びその前の高峰秀子が一人で歩いて来る場面及び
家を訪ねた後に高峰秀子と森雅之が一緒に歩く場面のロケ地について新たな証言がある。
本HPにもたびたび名前を出させていただいている、『杏っ子』から『乱れ雲』までの成瀬作品のうち
8本の助監督を務めた石田勝心監督(2012年2月2日 79歳没) の遺稿集「成瀬巳喜男・海面の波 海底の波」
-助監督の観た師匠の映画-(2013年8月31日発行 私家版)のP131(追加)-P132(下記表紙写真=G-1追加記述)に記述されている。
この遺稿集は、石田夫人から管理者が相談を受け、石田監督が生前管理者へ私的なメールで
送ってきていただいていた文章を中心に、管理者が編集協力してまとめたもの。
成瀬組のスタッフ、キャストや石田監督の友人などへ配った私家版だが、国立国会図書館にも1冊献本している。
最近、読み返す機会があり、その時に「こんなことが書かれていたんだ」と気付いた次第。


その部分を以下引用させていただく。前述遺稿集 P131(追加)-P132
石田勝心監督による文章
P131
〜(略)〜
(註:成瀬さんは)戦後粕取(註:カストリ)なる粗悪酒を撮影所付近の闇酒場で飲み、
祖師谷の家へ帰る途中畑(P132)道の路肩で倒れて熟睡し、朝目覚めると靴を盗まれていて、
靴下裸足で帰宅したことが何回もあったとか。
〜(略)〜
この畑道は、撮影所正門から祖師谷大蔵駅に行く道で、『浮雲』でベトナムから
帰った高峰秀子が、初めて森雅之の家を訪ねて行くロケに使った家の前の道だと、
『浮雲』のセカンド助監督だった松森健監督に聞いた。ただしその後森が出て来て
二人で会って話す道は、新宿十二荘(社)で撮ったとのこと。敗戦10年経って、
さすがに焼け跡が無くなったからであろう。
〜(略)〜
なお、管理者の保有する資料(『浮雲』レーザーディスクの解説書)
によると、監督助手=チーフ助監督は岡本喜八、セカンドは前述の松森健、
サード=竹林進、フォース=小松幹雄となっている。