ハキリアリ



 ハキリアリは中南米の暖かい場所に生息する社会性のアリである。英語でもLeaf-cutter ant、Leaf-cutting antなどと呼ばれるように、葉を切りとる。その葉を何に使うかというと、巣に持ち帰って特殊なキノコをつくるために肥料として利用するのである。つまり農園(菌園)を営むアリなのだ。ハキリアリが育てている菌はアリタケと呼ばれ、ハキリアリの巣の中以外ではみつからない。ではどのような関係かというと、ハキリアリはアリタケの胞子から栄養分である糖分をもらっている。またアリタケは他の菌などの外敵からハキリアリに守ってもらっているという相互共生(mutualism)が成り立っているのだ。
 ハキリアリの巣は成熟した場合だと800万匹もいると、英語のWIKIに書かれてあったが、普通に書かれているものから判断すると100万〜200万匹くらいではないだろうか?
 ハキリアリはアブラムシも巣の中に飼っている。これも相互共生という形で形成されている。アブラムシは植物の汁を吸って、糖分が含まれている汁を分泌する。これがハキリアリにとって餌になる。そしてハキリアリはアブラムシを天敵から守ると同時に、アブラムシの卵を巣の中で育てることもする。このため、ハキリアリは農園だけでなく牧場も経営するなどと表現する場合がある。

 ハキリアリの階級は1匹の女王アリとオスアリ、働きアリに分かれる。女王アリはコロニーに一匹だけで体長は2cmほどになる。オスアリは普段はみれらない。飼育下の観察では、群れの一群をわけて飼育したときや、群れが大きくなったときのみ現れたそうだ。「キノコを育てるアリ〜ハキリアリのふしぎなくらし」(新日本出版社)にオスアリの写真が載っているが、女王アリと同じく羽根をもっている。
 日本のアリと同じように、アリの群れが大きくなると、新女王アリとオスアリが集団で誕生して巣から飛びたち空中で交尾をする。これを結婚飛行という。交尾して受精した新女王アリは新しい巣をかまえて産卵し、働きアリを増やしていく。
 さて、ハキリアリの大多数は働きアリで、これはすべてメスである。この働きアリは大・中・小と大きさが分かれていてそれぞれの役割が異なる。まず大きな働きアリは兵アリともよばれ、体長約16mmである。葉は切ることをせず、巣の警戒に当たっている。エクアドルの熱帯雨林でガイドがハキリアリの巣に棒切れを突っ込んで10秒ほどかきまぜた。そして引き抜いてみると、この兵アリが棒切れに噛み付いて一緒になって出てきた。10匹くらいくっついていたと思う。
 中型の働きアリは体長8〜13mmほどで、葉を切る主役であり、綺麗に列を組んで付近の木の健康な葉っぱをきって、巣まで運搬する。働きアリの頭がハート型に大きいのは、あごを動かす筋肉が発達している結果である。


中型の働きアリ

 最後に小型の働きアリは体長が3mmほどであり、主に巣のキノコ農園にいて葉を小さくかじりとり、特殊な分泌物をまぜてペースト状にして畑をつくる。なお、この分泌物にはアリタケの成長に重要な酵素も含まれていて、葉の養分だけでは足りないところをカバーしている。こうした一連の耕作により畑にアリタケが増殖して菌園をつくるのだ。なお葉を運んでいる無防備な働きアリに寄生バエが卵を産みつけることがある。そのためこの小さな働きアリのもう一つの役目として、運ばれている葉っぱの上に乗っていて監視し寄生バエを追い払う役目がある。


 葉の上に乗っているのが小型の働きアリ(寄生バエを監視中)

 アリやハチなどの社会性昆虫はそのコロニー自体がひとつの生命体として動いているようである。一つ一つの個体はまるで一つの生命体のなかの細胞のような感覚である。なんど観察していてもあきない不思議な生き物である。ハキリアリはおなじ熱帯雨林でみれる軍隊アリと比べると狂暴性が低いし、近くで観察していても危害を加えてこないので、みていてとても愛らしい生き物である。


※写真はいずれもエクアドルにて


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