「…んっ、…んんっ…」
最初は恐る恐るだった岩男くんの舌の動き。あたしがちょっとずつ応えていくと、だんだん積極的になってく。深いキスをしたのは初めてじゃない。でも…何だか今日のは一段と生々しいよ。いつもなら、ちょっとするとやめてくれるのに、今日の岩男くん、止まらないんだもん。
口の中で岩男くんとあたしの唾液が混ざって、喉の奥まで満たされてく。限界を感じて、こくっと飲み込むけど、半開きの口の端からも溢れ出てくる。すごいね、なんか。
岩男くんの指が小刻みに震えながら、あたしのボタンを丁寧に外していく。大きめのだから、少しはいいかな? やっぱ、自分から脱ぐのは抵抗あるもんな…こうして脱がせて貰うのも、何だか岩男くんのものになっていく手順のような気がして。
「あふっ…、んっ…!」
唇が外れて。顎まで伝ったものを岩男くんの舌が舐めとる。そして、その先、首筋に進んで。いやん、ぞくぞくっとする。ぷるぷるっと首と肩がひとりでに揺れた。
「菜花ちゃん…」
顎の下、岩男くんの頭が入り込んで、髪の毛がくすぐったい。柔道部を引退して、彼は角刈りだった髪の毛を少しだけ伸ばした。岩男くんは優しい顔をしてるけど、髪の毛が短いとちょっと怖かったのよね。身体が大きいから、黒っぽい服を着てるとヤクザの人みたいなんだもん。
最後のボタンがぷつんとはずれて、あたしを包んでいた服が、ただの布になる。脇の下から差し込まれた岩男くんの手のひらがゆっくりと袖を抜いてく。
…あ、恥ずかしいかも知れない。やぁん…ブラが見えちゃう。もう、丸見えだ〜。白地に細かい赤の水玉。パンツとお揃いの。真ん中に付いてるおリボンが可愛いの。でもっ、子供っぽいなあ。岩男くんに初めて見せる下着だもん、もっとお姉さんっぽいのにしたかったな。頑張って、いっぱい揃えてたのに。
「ふふっ…可愛いっ…」
岩男くんはそれでもすごーく嬉しそう。布地の上から、あたしの胸を手のひらに包む。うわあ、ちょっと、すっぽり入っちゃうよっ。だんだんからだが後ろに倒れて、やがてタオルの感触が背中に広がった。
「いっ…岩男くんっ…!」
ぴくっと腰が跳ねた。今度はウエストに手が掛かる。ぷつっと束縛が解けて、ホックがはずれて。そのまま、足の方に引き下げられた。だんだん心細くなってきて、涙が溢れそうになる。鼻の先がじんとした。
「大丈夫だよ…菜花ちゃん、そんなに怯えないで…」
そう言う岩男くんの声はいつもよりもうわずっていて、それでも優しい。降り注ぐようなキスも、耳元を揺らす言葉もみんな心地よいのに、…どうして泣きたくなるの? あたし、だんだん、我慢出来なくなってくる。これから何が起こるのか、すごくすごく怖くて。
かくんかくんと身体が震え出す。岩男くん、自分のシャツを脱いで、その下のTシャツも脱いで…生のまんまの裸の胸をあたしの目の前に向ける。少し真ん中の辺りに毛が生えてるんだ。
どうしてこんな風におとなになっていくんだろう。岩男くんもあたしも、どんどん変わってく。それがとても寂しく思えることもあった。岩男くんがだんだん遠くなるみたいで。
そして。
こうしておとなになった身体をお互いに晒しあう。10月のさらりとした空気の中、しっとりと汗ばんでくる肌。
呼吸も、心臓の音も近い。岩男くんが、側にいる。すごく…一番近いところに。だってね、体温が伝わってくるんだよ? 触れてなくても…空気を通して。
「…菜花ちゃんも…触っていいよ?」
「え…?」
胸の筋肉がぐりんと動いて、うわ、生きてるみたい。
「え…、でもぉっ…」
困っていると、岩男くんがあたしの手をとって、広い胸にぺとっと押し当てた。ひ、ひやっ…やわらかいっ…、もっと堅いかと思ってたのに。で、とっても熱くて…汗ばんでる。心臓の音が、呼吸によりもずっと早く高鳴っていた。
「オレはっ…菜花ちゃんのものだからね。どこを触っても、何をしてもいいよ?」
そう言いながら、あたしの胸の谷間にキスする。う〜ん、ちょっとちっちゃいのよね、あたしの胸。もうちょっとぼいんぼいんになれば良かったなあ…実は妹の梨花よりもちっちゃいんだ。姉として屈辱。ブラのサイズも違うんだよ〜。
「あぁ…っん…」
舌先で、ブラのフチをなぞる。それだけで背筋がぞくぞくっとする。岩男くんの吐息が湿った部分にかかってひんやりと熱を冷ます。
「可愛いっ…菜花ちゃん、すごくっ…可愛いねっ…!」
背中の後ろに腕が回されて、少しからだが浮く。岩男くんの両手が後ろのホックに触れて、よいしょ、と言う感じで何度も滑りながら行ったり来たりするの。こういうのって、一発でぱちっと外れるもんじゃないの? 岩男くんっ…指が滑ってるよ? 汗かいてるから…、それとも震えてるの?
…ずるっ…。
ここまで来ると、もうやさしく、って感じじゃない。岩男くんは焦るようにあたしの胸からブラをはぎ取って、身を起こした。
「…うわっ…」
声がかすれてる。いやぁんっ…どうしようっ…。岩男くんが見てるっ、やん、みんな見られてるのっ!?
「や、やぁっ…、恥ずかしいよぉっ…、見ないでっ…!」
必死で叫ぶあたしの肩にぎゅっと手を置いて押さえつけて、岩男くんはじーっと見つめてる。あたしの動きにあわせて、胸が控えめに上下する…大きく動くほどのボリュームがないのが情けないけど。
「…すごいっ…、綺麗なピンク色だっ…。触っていい?」
岩男くん、あたし答えてないよ? 何も言ってないよ…? と言うかもう喉が詰まって言葉にならない。かくかくと震える歯がかみ合わないの。
それなのに岩男くんが片手であたしを抱きしめながら、右手を動かして胸を包む。周りから五本の指がふんわりと落ちてきてそのまま、ぎゅっと握りしめるみたいに揉み上げられた。
「やっ…、ふぅっ…、はんっ…あぁんっ…!」
逃げたくても、あたしは岩男くんの腕の中。顔に、首筋にいくつもキスされて、両方の胸を代わる代わる触れて揉まれて。岩男くんの指、付け根のところがマメで堅くなってる。そこが…胸のてっぺんに当たるのっ、そうすると、びくびくっと身体が跳ねて。
そうしてるうちに色づいてるその部分が、だんだん堅くなってきて、とんがってくる。おとなの女の人みたいに。…何だか、漫画で見たヌードみたい。こんなにきちんとかたちになってるのって、自分のものなのに初めて見た。
「ううっ…、ふっ…!」
身体がのけぞる。くすぐったいのに、その中に、湧きあがってくる気持ちよさがある。岩男くんがこうしてるから? あたし、どうしちゃったんだろっ…へんなのっ、身体がびくびくって言ってるっ…!
「やわらかいね、菜花ちゃん。すべすべしていて気持ちいいよっ…それにすごく滑らかで…気持ちいい…」
岩男くんはもうたまらないって言う感じで、ピンとそそり立ったその部分を口に含んだ。ちゅううって、微かに音を立てて吸い上げる。
「やぁっ…、ああぁんっ…、あんっ…!」
もう駄目っ…、おかしくなりそうっ、岩男くんっ、これ以上しないでっ…あたし、変になっちゃうよっ…!
「食べないでっ、もういやっ、恥ずかしいよぉ…、許してっ…!」
胸の中の岩男くんの頭、髪の毛に指を立てて、行き場のない気持ちを逃す。どうして、やめてくれないの? あたし、困ってるのにっ…。頭がクラクラする、芯の辺りがぼーっとして…ほっぺが熱い。
「…ふっ…、ああっ…!」
ぺちゃぺちゃ、あたしの身体を上へ下へ這い回る岩男くんの口元から、不思議な水音が聞こえる。ちゅっと吸い付いたり、舌でつついたり、舐めたり…いつの間にかシーツに投げ出された身体が隅々まで岩男くんに触れられて、くすぐったさをとっくに通り越した感覚に支配され始めていた。
やがて、投げ出されていた下半身に唯一残っていたパンツに太い指が掛かる。ひやん、と思った時にはもう、ずりずりっと引き下げられてた。あたしの下着なのに、岩男くんの言いなり。何だか情けない。たった一枚の薄っぺらな布だけど、あるとないとじゃ全然違う。片足を抜かれると、そのまま足首を持ってぐっと大きく左右に開かれていた。
「きっ…、きゃあああっ…、やあぁっ…!」
慌てて膝を閉じようとしたが、すぐに岩男くんの大きな身体が足の間に入り込んでくる。我慢の出来なくなった腰が跳ねて、上に逃げようとした。でも許して貰えない。岩男くんはぐっと伸び上がって、涙目のあたしに口づけた。
「いっ…岩男くんっ…!」
恥ずかしいよぉ…こんな格好やだっ…! 言いたいのに、言葉にならない。もう消えちゃいたい。
岩男くんはあたしの顎を片手で包んで、何度も何度もキスしながら、…もう片手はするするっと身体の輪郭を伝って、おなかの、そしてその下の薄い茂みに進んでいく。まあるく円を描くみたいに、くるんくるんと毛並みを指先が梳かす。その下の部分、いつもは布で包まれて、しかもぴっちりと閉じてる部分が、開いてるからスースーして。安定しない下半身が心細い。
今のあたしの格好。すごく情けないと思う。仰向けにひっくり返されて、転がったカエルみたいだよね。どうして? 全然素敵じゃないの。もっと流れるみたいにロマンチックなのかと思ってたのに。こんな恥ずかしい格好で岩男くんに揉まれたり、舐められたりして。そのたびに身体が揺れて、変な声が出て。
そんな自分が恥ずかしいとどこからか冷静に感じてるもうひとりの自分がいるみたい。…や、こんなのっ…もう、嫌っ…!
「いっ…岩男くぅん…! ねええっ…、あぁん…!」
もうやめて、って言いたいのに。岩男くんの落とす熱に翻弄されてしまう。
中途半端にたかめられた身体が、熱いところと冷たいところを行き来して。ふっと身体が浮いたかと思うと、現実に押し戻される。岩男くんの吐息が、だんだん荒々しく、動物みたいになっていく。あたしの身体を吸い上げると、喉の奥がぐるるっと言って。そして喉仏が揺れる。あまり強く吸われるとその部分が赤くなるね。虫さされみたいに。
「菜花ちゃんって…ここ、薄いね…」
そう言われて、つい足の方を覗いてしまった。岩男くんがあたしのとっても恥ずかしい場所をじっと見てる。あたしの上に覆い被さってるから、お布団の上、四つんばいで…ますます動物みたい。やあっ…いつ間にっ…岩男くん、全部服を脱いでるっ。ふたりとも何も着てないの? 見たこともないおしりのラインがくっきりと目に映る…どどど、どうしよう。恥ずかしいっ…。
さわさわさわっ…指でその部分を撫でながら嬉しそうに目を細めてる。やんっ…岩男くんのも、見えるよっ、すごいよっ…こんもりしていて、どうしてそんなに毛が生えてるの?おへその下の辺りから、もじゃもじゃって…で、ちょっとだけ、見えた。赤黒いものっ…ピンとおなかにへばりつくぐらいにこっちを向いてて。
やあっ、どうしようっ! 怖いよっ、あれが…あのっ、あたしの中に入ってくるの? 絶対に無理だよ〜だって、何度もタンポンを使おうとして、でも怖くてやめたんだもん。タンポンなんてあたしの指くらいしか太さないんだよ? それでも…すごく、痛かったのにっ!
もう、無我夢中で。出来るものなら、この場から逃げ出したいと思った。このまま押さえ込まれたら、絶対に逃げられない。きっとすごく痛くて、気を失っちゃうくらいに辛いんだ。や、そんなのっ…岩男くんはしたいかも知れないけど、あたしは嫌っ…! 駄目っ、こんなの、もう嫌なのっ!!
「…うっ…、うっくっ…!」
いつもは優しいはずの岩男くんが、あたしを押さえつけて離してくれない。キスだって、ためらいがちにする人が、どうして、こんな風にぐいぐいと感情を押しのけてくるの? あたしの心は恐怖でどうにかなりそうだった。冷たい頬を熱い涙が流れていく。
目の前も肌色。一面が岩男くんの身体。あたしなんて、すっぽりと覆い尽くしてしまうほど、大きくて広い身体。
「…菜花ちゃんっ…!」
ちくんと少し痛いキス。歯が当たったのかな? あまりに強くて、唇が切れそう。岩男くんがあたしの背中に腕を回してちょっと持ち上がるくらいにぎゅううっと抱きしめてきた。
「…うっ…ふうっ…」
息苦しくて、顔を左右に動かす。ねっとりと汗ばんだ胸に顔を埋めると、息が出来ないよ。むせるような体臭、汗の匂い。身体を開かれて、そこら中を全部岩男くんのものみたいに触れられて、口づけられて。それが嬉しいことのはずなのに、どうして怖いの? 岩男くんはどうしてこんなに男の人なの…っ?
「菜花ちゃんっ…、菜花ちゃんっ…!」
あたしの身体を浮き上がらせて支えているのは岩男くんの膝と肘。そんな4つの支点に守られて、あたしは包まれる。
「ごめんっ、怖いんだよねっ…! 嫌なんだよねっ…、分かるけどっ、それは分かるんだけどっ…!」
おへその辺りでぐぐぐっとあたしを押してくる熱さ。もう限界なのかも知れない。男の子は自分の意志よりも先走っちゃう困った欲求があるんだって。女の子はムードとかロマンチックな部分をすごく求めるのに、男の子はそうじゃない。征服欲、と言うのがあるんだって保健体育の時間に習った。
「…ごめんっ…!」
ここまで来たら、止まれないのかも知れない。岩男くんは本当に今、ギリギリで。あたしのこと、すごくすごく欲しいって、思ってくれてるんだ。
「…うぅっ…!」
あたしは岩男くんの胸にぎゅっとしがみついた。この身体が怖い。だってあたしを変えてしまうから。今まで感じたことのなかった熱をたくさんたくさん落として、深いところに落とそうとする。おとなになる、と言うことはこんなにも心細くて恥ずかしいことなの? こんな情けない姿を晒さないと、岩男くんのものにはなれないの…?
それでも。
口惜しいけど、それでも岩男くんが好き。
夢見てたみたいな素敵な初体験じゃないけど。現実は想像してたよりもずっと生々しくて、恥ずかしくて、いやらしいけど…それでも。
「いっ…わぉくっん…!」
背中に回した腕が震える。岩男くんの身体に押しつけるとささやかな胸もかたちを変えて。やがて、心臓の音がひとつになる。お互いがお互いのために時を刻み始めるんだ。
「…菜花、ちゃん…!」
岩男くんは苦しそうにあたしの名前を呼んで、それから片手を下にずらしていく。身体がお布団の上に戻されて、岩男くんがくっつくギリギリのところで身体を浮かせながら、あたしの、身体の奥を浸食し始める。
ざりざり、ざりざり…。太い指が何度もその場所を滑る。自分でも丁寧には触ったことのない秘められた部分。もちろん、きちんと眺めたことなんてない。そこを、岩男くんが触れる。大事な傷口みたいに、恐る恐る、探っていく。襞をかすめる熱さ。
「…ふっ…、うぅうっ…!」
食いしばった歯の間から、呻きが漏れた。
岩男くんが茂みの下、すごく感じやすくなっている部分をつまみ上げたのだ。ころころと親指と人差し指を使って、転がされる。痛いのにこそばゆい、とても不思議な気分がした。それと同時に、身体の奥から、なにかとろんとしたものが流れ出てくるのが分かる。
…知ってる、この感覚。
そうだ、生理の時と似てる。どろっと内側から溢れてくる液体。それが岩男くんの小指に絡みつく。
男の人を受け入れる時に、ちゃんと身体がそうなりやすいようになる。内側がちゃんと潤って、滑りやすくなる、壁の肉も軟らかくなって。それが…本能。あたしだって当たり前に女の人なんだから、きちんと、岩男くんを受け入れることが出来るのかも知れない。
…ちゅっ、ぷっ…!
恥骨に響いてくる感触。襞をかきわけ、入り口をこじ開けて、岩男くんの指が中まで入ってくる。
「ひっ…ひやっ…、ふっうっ…!」
逞しい二の腕にしがみついて、そのぞくぞくしたおぞましさから気を逃す。とても気持ちいいとは思えない、おなかをえぐられる、生々しさ。麻酔なしの内臓手術みたいだ。
「やっ…やぁんっ…、ううっ…、はぁんっ…!!」
岩男くんはあたしの首筋に右から、左から、たくさんたくさんキスする。下で起こっている事実を忘れさせるように。でも。そんなことしたって、気持ち悪いものは気持ち悪いの。でも、我慢しなくちゃいけないのっ…! だって、だって、あたしは岩男くんが好きなんだもんっ。すごくすごく好きなんだもんっ…大切なんだもんっ!
だったら…やっぱ、頑張らなきゃっ…!
「うわっ、菜花ちゃんっ…菜花ちゃんっ…!」
背中に回った岩男くんの手。その指に力がこもって、指圧するみたいに、ううん、もっと…食い込んで骨までえぐるみたいに突き刺さってくる。
「…うぅっ…、ふうっ…」
ずるっ、鈍い感触が走って、ぬかるみから指が引き抜かれる。あたしを左右からぎゅううっと押さえつけて、岩男くんが静かになる。しばらく息を止めたあと、はああああっと溜まったものを一気に吐き出した。
「…あっ、あのっ…。どうした、の…?」
ただならぬ雰囲気に今までの緊張も吹き飛んで、訊ねていた。ホント、我を忘れてこのまま突っ走ろうと思っても、いつもふっと現実に戻っちゃうね。変なの、やだなあ。
「はっ…はぁっ…、ご、ごめんっ…!」
岩男くんは苦しそうに息を整えてから、目を開ける。額に珠のような脂汗が浮いてた。あたしの視線に辿り着くと、恥ずかしそうに頬を赤くする。
「やばかった…、出ちゃうかと思って…危なかったっ…!」
…は、はぁ…。
ああん、もうっ! 何でそんなっ、ムードのないこと言うのよっ。
目尻に溜まった涙が溢れて、あたしも泣き笑いの表情になってしまった。おでことおでこをくっつけて、一頻り笑いあう。そのあと、岩男くんがあたしの涙を全部舐めとってくれて…身体を起こすと、あたしを引き寄せた。熱い熱い腕の中に抱きしめられる。亜熱帯気候だ、そんな感じ。10月なのに、胸の中で一面のひまわり畑。
「…でさ、菜花ちゃん…」
岩男くんが腕を伸ばして、机の引き出しを開ける。あれ、何するんだろと思ったけど、やっぱ、そうか。銀色の四角い包みをつまみ上げると、あたしを上向かせておでこに頬にキスした。
「そろそろ、いいかな…」
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