TopNovel未来Top>キスから、夢まで。・9


…片側の未来☆梨花編その2…
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 聖矢くんのこと、不思議だなと思う瞬間はたくさんあった。

 それに気付く時の、心がふうっと浮き上がるみたいなくすぐったさが、だんだん私の中に今まで存在しなかった違う色の空間を作り始めていた。

 

 毎日、歩いて1時間くらいの駅前まで送ってもらっていた。それは私の提案したこと。

 もっと気の利いたデートの方法がある気もしたけど、彼に余計なお金を使わせるのも嫌だったし、それでも少しでも「彼女」らしくするには……やっぱ、家まで送ってもらうっていう王道パターンかなと思っちゃったのよね。地下鉄だとあっという間だから、夕暮れに歩いたら、少しは「らしい」かなとか。

 お姉ちゃんは中学や高校の頃、岩男くんに家の前まで送ってもらっていた。あ、もちろん、つきあいだしたあとのことだけど。
 それにクラスの友達も、彼氏には家まで送ってもらうとか言っていた。ある子は遠くから自転車で通学してくる彼を家の前で待っている。そしてそのあとは学校までふたりで歩くのだ。彼は自転車を押して。電車通学の方が早いし楽なのに、そうしてくれる気持ちが嬉しいんだとか言ってたっけ。またある子は、家の方向が反対なのに送ってくれるんだよと話してくれた。

 ……ふたりで連れ立って歩くだけじゃない。それに毎日毎日、よくもまあ話が尽きないわね。気まずい空気が漂ったらどうするのよ。東京ディズニーランドはつきあい始めのカップルが行っちゃ駄目って知ってる? 何故なら、待ち時間が長すぎて、間が保たないからなのよ。

 そうは思ったんだけど、他には思いつかなくて。聖矢くんも変だなとか思っていたかも知れない。

 

 まあ、どうにか駅前に着いて。そうっと、聖矢くんの方を見てしまう。彼が目に見えて安堵の表情を浮かべているのが、ちょっと悲しかった。

 何よ、一緒に歩きたくなかったの? だったら、そう言えばいいじゃない。私だって、きちんと聞いたはずだよ。いいよって、言ってくれたじゃないの。……どうすればいいのか、教えてくれないで、私に合わせてるくせに。

 男らしく、リードしてくれたっていいじゃないの。

 

 そんなとき。

 私たちの目の前を、駅の構内からどっと吐き出された人並みが遮った。ソフトクリームの屋台に行こうと歩き出していた足が止まる。通り過ぎるまで待っていると、その後方から見慣れた制服のカップルがやってきた。その姿を見た瞬間、胸がぎりりっと痛くなる。

 もう……忘れたいのに、でもやっぱまだ駄目なんだ。

 お姉ちゃんと岩男くんが通っていた「西の杜」の制服。しかも男子は高等部で、女子は中等部。似てるんだけど微妙にデザインが違う。制服だけでも悲鳴を上げちゃうくらいのお値段なのに、高等部に進学する時に買い換えなくちゃいけないんだ。すごいよ、ほんと。私の高校の制服の5倍もするんだよ。

 お姉ちゃんたちは、同級生だからああいう組み合わせにはならなかった。あれは……私が夢見ていた「未来予想図」なんだな。

 

 学費のこととか、色々な悩みはあったけど。それでもお姉ちゃんたちがらぶらぶになる前は、私も西の杜に進学するつもりがあった。はっきり言って、合格する自信もあったし。3つの歳の差があっても、私と岩男くんには柔道という共通項がある。それを使えば、親密になるのは簡単だと思ったんだ。
 ――お姉ちゃんには、気の毒だけど。だって、いいじゃない。お姉ちゃんは他にもたくさん彼氏の候補がいる。みんなお姉ちゃんのことがすごく好きで、好きで好きでたまらないよ〜って感じなの。あんな風に愛されるなら、いいじゃない。でもね、私は岩男くんじゃなくちゃ嫌だったから。

 ……ああ、どうして。私じゃ駄目だったんだろう。頑張ったのに、勉強も柔道も。それに少しでも早く岩男くんに追いつきたかったから、子供っぽい服装や趣味もやめた。お友達が聴いてる音楽より、少しオトナっぽいのをわざわざ選んでいた。

 それなのに。私の、どこが駄目だったんだろう。

 

***   ***   ***


「おっ…俺さあ…」

 お互いに話も尽きたのか、ソフトクリームを買う頃には、会話が途切れていた。ふたりでベンチに腰掛ける。目の前のあちらこちらには私たちと同じ感じのカップルがたくさんいた。みんな同じソフトを持っている。なかなか滑稽な情景だと思う。

 

 でも……あっちの人たちの方が、幸せそうだなぁ。

 

 そんな風に思っていたら、隣に座った聖矢くんが急に思いだしたように話し出した。

「中学の頃っ、1年だけ『西の杜』に通ってたりするんだよな〜っ…なんか、あの制服っ、懐かしくてさ」

 急に何を言い出すんだろう。その真意が分からない。誰も聞いてないのに、彼は自分が必死に勉強して中学受験をしたこと、そして無事に合格出来て喜んだのもつかの間、全く勉強に付いていけず、すぐに脱落してしまったことを話してくれた。

 

 ……変な人。

 彼がわざとおどけながら話すのを、ぼんやりと眺めていた。どうして、この人、こんな風にぺらぺらと自分の過去の嫌なこととか話しちゃうんだろう。普通そういうのって、誰にも知られないように内緒にするんじゃないのかな。こんな性格だから、あの夜も、あんな風に元の彼女さんのことを恥ずかしげもなくわめいていたんだろうか。

 その神経が、理解出来ない。カッコつけて、体裁を繕う人を滑稽だと思っていたけど、こんな風にストレートに来られると、どうしていいのか見当が付かなかった。

 

「ふうん…そっか」
 あ、ちょっと顔色が変わった? もっと違う反応をすれば良かったのかな。気の利いたひとことが出ないって呆れられたかな? 分かんないよ、どうすればいいのかな。

 

 仕方ないから苦し紛れにお姉ちゃんのことを聞いてみた。お姉ちゃんは在学中6年間連続のパーフェクトで「ミス西の杜」だったと言うから、きっと知ってるかも知れない。……ううん、そっか。この人も結局はお姉ちゃんを知ってる人なんだ。

 だよなあ……、知らないはずなんてないじゃない。私としては、それほど目立つ家族だとは思ってないのに、何故か私たちの存在は広く知れ渡っている。誰が目立つから、と言うよりも相乗効果なんだろうな。たとえば、パパがひとりでいるよりも、ママと並んで歩いていた方が10倍目を引くんだもの。

「槇原梨花」のことは知らなくても「槇原菜花」は知ってる。そうなれば、私も聖矢くんの中で「菜花ちゃんの妹」と言う名前に変わってしまうんだ。

 

「ごめん、…分からないや」

 しばらくの間、うんうんと悩んでいた聖矢くんがそう言った時、最初は私を気にしてわざとしらばっくれているのかと思った。聖矢くんとお姉ちゃんとの接点が浮かび上がった時点で、私はすごく沈んでしまったから。心の中から追いだしたはずのお姉ちゃんにまだ支配されてる。大嫌いなのに、顔も思い出したくないのに。それでも私は「菜花ちゃんの妹」でしかない。

「知らないの? …本当に?」
 すごくすごく、不思議だった。本当に知らないのだろうか、本当に?

 

 もしかして、この人は私が「菜花ちゃんの妹」じゃなくても、そうだと知らなくても、呼び止めてくれたの? お姉ちゃんの妹だから、って思っていたんじゃないの?

 驚きすぎて、私は頭の中がスポンジになってしまった気分だった。その後もどうして私が西の杜に行かなかったのかとか、もうたくさんの人に何十回も聞かれたことを尋ねられたけど、どうやって答えたかも覚えてない。

 

 ……信じられないくらい、不思議な人。

 自分の中で、そう認識した彼を、もうちょっと知りたいなと思った。

 

***   ***   ***


「自分らしく」と言う言葉を良く耳にする。

 金子みすずの詩じゃないけど『みんなちがって、みんないい』 と言うように、自分が他の誰とも違うただひとりの存在だと言うことを心に刻み込んで生きろと言うのだ。戦後の長い長い学校教育の歴史の中で、全体が同じ方向に向くような学び方はもはや古いと言われていた。

 誰にでも、いいところがある。そう信じて生きるようにと。

 

 小学校の頃から、作文でも絵でも「自分の好きなように、のびのびと作成しなさい」と先生から言われることが多かった。中学校になると体育で創作ダンスをしたりして。身体の動きを使って表現することを要求された。もちろん、それがひときわ上手だったのは新体操部の子とかバレエを習ってる子だったけど。

 

 ある時、創作ダンスの発表の時に「自分を表現しなさい」と言うテーマが出たことがあった。何とも抽象的で分かりにくい。クラスのみんなも困っていた。

 だけど。そんなとき、私は他の子たちみたいにただ「出来ない〜」とか文句を言ったり、きゃーきゃーと恥ずかしがってはいなかった。発表当日。先生とクラスメイトの前で、堂々と綺麗な鳥のように舞った。

 バレエとか習ったことはない。ミュージカルのステージを見たり、お友達の発表会を見に行ったりするくらいだった。その時のことを何度も頭の中で再生する。もちろん、いくつかDVDを見たりして、イメージを膨らませることも忘れなかった。自分の部屋の鏡の前で、何度も何度も練習して、納得のいく出来になるまで頑張ったのだ。

「とても……良く出来ました」
 大学の頃、新体操をやっていたという体育教師は両手放しに絶讃してくれた。観客として見ていたクラスメイトたちも同様だ。

「槇原さんらしさが、とても良く出ていましたね。毅然としていて伸びやかで…新体操を本格的に始めることをおすすめしたいわ」

 みんなの賞賛とため息。そんなものに包まれながら、私はひとり冷静だった。この評価は私にとっては当然のものだった。みんなから誉められるように、期待に応えるために努力したんだから。自分に出来る最高の成果を示して、それに相当した手応えを感じる。そんなの日常茶飯事の当たり前のこと。

 

 ……それに。

 みんなの言葉に笑顔で応えながら、私は心の中で思っていた。

 

 ――アンナノ、ワタシジャナイ――

 

 どうして、みんな分からないんだろう。

 私が表現したのは、私自身じゃないよ。あれは、他の人から見た「槇原梨花」の姿。みんながイメージした私。偽物なんだよ、良くできてるけど。それに気付きもしないで、みんな馬鹿だわ。人間の表面しか見てない。

 本当の私は、誰も知らない。誰にも気付かれない場所にいる。そして、いつももうひとりの自分を冷静に眺めているんだ。

 

 みんな、馬鹿ばっかり。そう思ってた。――でも、一番馬鹿なのは……他の誰でもない、私自身なんだよね。

 こんな風に走り続けなくちゃ、評価されない。評価されない自分なんて、情けないし許せないからまた努力してしまう。走って走って、ずっとずっと走り続けて。どこまで行けばいいんだろう……? いつか、倒れちゃうよ、もうこれ以上進めないって、限界が来るんだよ。その時に、私はどうなるの?

 私、しっかりなんかしてないよ。真面目でもないし、頑張りやでもない。ただ、ただ、「梨花ちゃんが、出来ないの?」「槇原さんなのに、どうして?」と言われるのが怖かったから、ギリギリいっぱいで走っているんだ。

 

 必死に走れば、届くと思っていた。3年の歳の差。岩男くんとの距離。いつか、隣に立てる日が来る。その日まで。岩男くんが私に手を差し伸べてくれる、その日まで……。

 それはいつ? ……いつまで…?

 

***   ***   ***


 一緒に並んで歩けば、恋人みたいに見えるのかと思ってた。なのに、そうじゃない……おかしいなあ。そう考えていた、3日目。

 

 長い長い街道。まっすぐに伸びる幹線道路。その両脇に煉瓦敷きになった歩道があって、街路樹が植えられている。途中、長い橋を渡る。そこが真ん中。海に注ぎ込む前の緩やかな流れが、夏の輝きをたたえながら横たわっている。そこを通る時、いつも涼しい風が吹いていて、私の垂らしたままの髪がさらさらと舞い上がった。

 

 ……もうちょっと、なんだけどな。

 

 並んで歩いても、ふたりの間が開きすぎてる。これじゃあ、髪の先が触れるのも無理。それがちょっと寂しい。

 髪に触れられるのは好きじゃなかった。たまに、クラスの男子とか「綺麗な髪だね」とか言って、さりげない振りして触ってくることがある。その時、顔は笑っていたけど、思い切り身体中に鳥肌が立っていた。若い頃のママにそっくりだという真っ黒なストレート。多くも少なくもない髪の量で、普通にしているだけでシャンプーの宣伝みたいなさらさら感。

 お姉ちゃんになくて、私にあるもの。それを探したら、一番分かりやすいのがコレだと思う。まあ、お姉ちゃんにはあのふわふわの髪があるから、どっちがいいとは言えないけどね。

 聖矢くんだって、気付いてるはずだ。自分の横で、髪がさらさらと流れていたら。もしかしたら、触ってみたいなとか思ってるかな? そう言う風に考えてくれることが……あるのかな?

 

 今、何を考えてるんだろう?

 今日の聖矢くんは少し元気がないみたい。昨日なんかは一生懸命こちらを笑わせるような話をしてくれたのに、今日はそれもなくて。ぽつりぽつりと会話が途切れてばかりいる。どうしよう……こっちから何か話題を振った方がいいのかな? でも、何を話そう。思いつかないよ…。

「…聖矢くん?」

 まっすぐに前を見た横顔がはっとして、こちらを向いた。慌てたように、笑った顔を作ってる。そんな風にされちゃうと、もうどうしていいのか分からないよ。

 ねえ……、嫌なの? 私と歩きたくないのかな。どうしてそんな風にきょろきょろしてるの……?

 

 もう一度、前を向いた聖矢くんの視線がふいに止まった。何だろうと思って、私もそちらを見た。

 ――あ、目の前をひと組のカップルが歩いてきた。女の子の方が、彼にすりすりっとしてる。夏の盛りだというのに、そんなことお構いなしにふたりの世界に入り込んで。彼の方もまんざらじゃないみたい。腰に手を回したりして、もう見てるこっちがドキドキしちゃうわ。ああん、どうしよう。どこを見たらいいのよ〜。

 

 思わず、目をそらしていた。あまりじろじろ見るのも恥ずかしいじゃない。でも、でもっ…。視線を川面に映しても、見たばかりの残像が瞼の裏に張り付いてる。

 ――あんな風に。素直に甘えられたら、いいだろうな。彼が自分のことをきちんと受け止めてくれるって信じられたら、簡単に出来ることなのかも知れない。でもっ……、駄目かな? もし、やだなって思われたら、困るし。そうじゃなくても、聖矢くん落ち着かないし。

 でもっ…でもぉ。何もしなかったら、今日もこのままだよ? いいの、こんなで。もしかしたら、ふたりで歩くのなんて楽しくないなって、明日からもう来てくれないかも知れない。

 気もそぞろって、こう言うことを言うのかな。あのカップルが通り過ぎたあと、私は自分の心が身体からちょっと浮き上がっている感じでいた。胸がドキドキする、やだ、私、何考えてるの。

 

 ――聖矢くんと、くっつきたいな。

 

 指が……知らない間に伸びて、聖矢くんの手のひらを探した。その場所を横目で確かめながら、ちょっとだけ触れてみたら、ぴくり、とそこが跳ねる。思わず、どっきりして、手を引っ込めてしまった。 

 ああん、馬鹿っ……何してるのよ〜。

 恥ずかしくて、消えちゃいたい。でもっ…、一瞬だけ触れた指先が熱くなって、そこから今までと全然違う感覚を運んでくる。指が何かのセンサーになったみたいに。胸の鼓動はもうギリギリ張り裂けそうに内側から打ち付けてる。それなのに……、もう一度、求めていた。ぬくもりを。

 

 再び指が触れ合った時。心の奥がじんとして、何かあたたかいものがじわっと湧いてきた。……何、これ。何なんだろう……?

 触れ合いたい、包まれたい……そばに行きたい。聖矢くん、勇気出してくれないかな? 慣れてるでしょ? 女の子なんて。抱きしめたり、キスしたり……その先のことだって、たくさんたくさんしてきたはずだよ。だったら、いいじゃない。ねえ、…駄目かな?

 

「…あのっ…」

 頭の中ではいろんな単語がごちゃごちゃにかき混ぜられている。でもそのどれもが、きちんとした言葉を形成しない。心を伝える機能がおかしくなっちゃったみたいだ。

「恋人同士って、あんな風に手を繋いだり、腕を組んだりするんだよね? どうしてなんだろう、ああやってもっと仲良くなるのかしら?」

 

 やだなあ、何言ってるんだろ。こんなのって、恥ずかしいわ。こちらから誘っているみたいじゃない。…ねえ、私の言いたいこと、分からない? 気付いてくれないの?

 さりげなく指が触れたら。何となく何となくそんな風になるのかと思ってた。そうじゃないの…、違うのっ? 苦しいよぉ、このままじゃどうにかなっちゃいそう。どうして、自分から動いてくれないの?

 

 何て……格好悪いふたりだろう。お互いの距離を縮めることすら出来ないまま、ただだらだらと歩いていくの?

 

「…手、繋いでいい?」

 とうとう、自分から言っちゃった。もう、恥ずかしいなんてもんじゃない。熱くなりすぎた胸が焼け落ちそう。必死の想いで見上げて、視線が合った瞬間にそらしてしまった。どうしようっ……、やだって言われたら、どうしたらいいの。情けないよぉ……。

 

 ふわっと。

 その時、聖矢くんの握りしめていた片手が少し開いた。指と指の間に隙間が出来る。いいのかな…、ねえ、いいの? 振り払われたりしないかな? 大丈夫……かなぁ。

 指の先に神経を集中させて、そおっと一本ずつ指を滑り込ませる。全く意志を持たずに、ぴくりともしない指と指を絡めて、少しだけ、力を込めた。少し汗ばんだ手のひらが、しっとりと吸い付いてくる。そこからあたたかくて幸せな想いがふんわりと舞い上がった。

 

 うわ、何か、すごいっ……! ふたりのどきどきがひとつに重なり合う。緊張してるんだけど、がちがちなんだけど、それなのに…あったかいよ。

 

「…ふふっ…」

 本当に幼稚園児みたいにあどけなくて当たり前の事なのに。すごくすごく嬉しくて。思わず笑いがこみ上げてきた。長く伸びた影、私が揺れて、隣りの聖矢くんはロボットみたいに固い。

 ぎこちないぬくもり、それだけなのに。心の氷が少しずつ溶けだしていく。

 

 その時はまだ、知らなかった。

 恋人になること……誰もが当たり前にしていることが、どんなに私にとって難しいことなのか。指と指が絡み合うように――簡単に、あっという間に、幸せになれる気がしていた。


 

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