ベール
 ベールがあるからスピニング。308や408のベールについてです。

移り変わり
タングステンカーバイドの固定ガイド
 70年代までの308や初期の408に使われた、タングステンカーバイドの超硬固定ガイドです。
 ベール自体はシンプルで軽く、回転バランスもいいのですが、糸への負担が心配なので、私は組み替えてしまいます。古いものを見ると、長期使用で糸溝もできるようです。
 右が初期のもので、ベール反転レバーがベールアームストッパーを兼ねているもの。左が後期のローターの一部がベールアームストッパーになっているものです。
ローラーガイド1
 70年代の408や初期の308Aに使われた、硬質クロムメッキのローラーガイドです。
 当時は糸ヨレについてあまりいわれなかった(恐らくみんなあきらめていた)時代だったのですが、いまあらためて使ってみると、最新リールなみによれないローラーです。
 日本で408が名機といわれたのは、このへんも大きかったのでしょう。
 上の固定ガイドもそうですが、中古品の中には無理やり手でベールを閉じて、ベールアーム部が曲がったものもあります。そうしたものはローラーが内側に倒れていて、ヨレが出ます。
ローラーガイド2
 80年代の初めにごく少し使われた、ベールが分割式になったローラーガイドです。写真のベールは4420のものですが、308と408にも使われました。軽合金製だった4400シリーズに対し、308と408のものは真鍮とピアノ線をロウ付けし、クロムメッキしてありました。部品が残っていないのですが、ベールアームは下のローラーガイド3と同じデザインなので、外観上はほぼ同じです。
 ラインローラーはブッシュなしで、固定がナットではなくボルトである点が、ローラーガイド3と異なります。
ローラーガイド3
 80年代中ごろから最後まで使われたタイプです。
 一体どうやって作るのか、ベールワイヤとラインローラーサポートがステンレスの一体ものになっています。ベールアーム(アームカム)は亜鉛ダイキャストのようです。
 ローラーにはポリアセタール系と思われるブッシュが入っていて、滑らかに回転します。しかも支持軸がステンレスで硬く磨耗紛が出ないので耐久性も十分です。糸ヨレは少なく、ヨレによるライントラブルもありませんが、80年代後半から糸の掛かる溝が浅くなって、そのへんがあやしくなっていきます。
 ただ、初期の溝形状の出ているものも、ヨレが少ないのではなく、前にしごき出しているようで、スプーンなどの動きが不安定になるような気もします。現在の糸ヨレ対策リールとは少し違うかもしれません。
 ベールアームへの糸がらみ(写真のようにエポキシで肉盛りすればOK)など問題もありますが、ローラー回転がいいので、私はこのタイプがいちばん好きです。

スプリングの折れについて
恐らく
 ミッチェルのベールスプリングが折れるという話をよく聞きます。恐らくそれは70年代までのベールのことだと思います。
 写真のように開き角が非常に大きく、バネの負担が大きいからです。
ミッチェルもわかってた
 80年代にベールを一体式から分割式に変更したとき、写真のように開き角を抑えています。私の持っているリールはほとんどこのタイプですが、ベールスプリングの折れは一回も経験していません。
 ただ、リペアパーツのページにも書いていますが、90年代になるとベールスプリングのLポイントの位置や巻き数が変わって、また折れるようになってしまったようです。うーん。
こういう手もあります
 70年代ものも、溝を削って開き角を抑えれば、寿命は延びるはずです。メッキがはげますし、オリジナルでなくなってしまうので、あまりおすすめしませんが。
歪んでます
 ミッチェルのベールが「壊れる」という話の中に、こういった例も多くあるようです。これは壊れたのではなく、ベールが歪んで、支点のフリクションが増し、動きが悪くなっているのです。ベールスプリングのへたりなどではありません。
 これと70年代のベールスプリングが折れた(当時のアウトスプールよりは長寿命だったはずですが)話がごっちゃになって、「ミッチェルはすぐ壊れる」ということをあたりまえのように言っている人もいます。ベールが歪むのは扱いが荒いからのような気もしますが……。
 修正するときは、ワイヤ部とベールアーム部のどちらが歪んでいるか見極めた方がいいです。普通に力を加えると、薄い真鍮板のベールアーム部が、ピアノ線のワイヤ部に負けて曲がってしまいます。

 軽さと回転バランスはタングステンの固定ガイド、糸ヨレはローラーガイド1、糸に優しくタフなのはローラーガイド3。どれも一長一短やなあ……。まあ、そこが詰めの甘いフランス製品らしいといえばいえるかも。(2002/12/27)

MITCHELL spinning reels