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2019年2月1日発行 No.608 

主の御目にあなたは重んじられている

                            金田 佐久子

 最近知人が『子どもの脳を傷つける親たち』という本を紹介してくれました。著者は、小児精神科医であり、福井大学子どものこころの発達研究センターの友田明美教授です。以前、友田教授の取り組みを新聞で読んだことがあり、そのときにも「脳が傷つく」という事実に衝撃を受けたことを思い出しました。改めてわたしも本を手に取りました。
 人の脳の健全な発達には、胎児期、乳幼児期、思春期といった、人生の初期段階に、親など身近な存在から適切なケアと愛情を受けることが必要不可欠です。ところがこの時期に極度のストレスを感じると、子どものデリケートな脳は、その苦しみに何とか適用しようとして、自ら変形してしまう、というのです。極度なストレスになる不適切な養育とは、体罰、ネグレクト、言葉の暴力、性的暴力などです。この本では、ダメージを受けた子どもの脳がMRIの画像で示されます。その子の脳が委縮しているのです。そのようにしてまで生きようとする幼い命があることに、驚き、悲しくなりました。とりわけ言葉による暴力が―子供に対してではなく、夫婦間のののしり合いや脅しなども―子どもの脳に傷跡を残すというのです。まことに、人は言葉によっても生きていること、そして、言葉は人を殺しも生かしもする、と思いました。
 傷ついた子どもの脳は、幼少期ほど柔軟ではないにせよ、適切な治療やケアを、根気よく時間と労力を重ねていけば、修復は可能だと言えるそうです。少し安心し、人には回復力が備わっていることに希望を感じました。
 この本の終わりで著者は「子どもに必要なのは、安心して成長できる場所です。それを与えることができるのは、われわれ大人だけです・・・社会全体で、親子の問題に取り組んでいく必要があります」と述べています。深く同意します。
 わたしたちの教会は、大人も子どもも安心していることができ、成長できる場所になっているだろうか。どのような言葉が交わされているのだろうか、どのような関わりが形成されているのだろうか、と改めて問われました。
 聖書は語ります。「主の御目にわたしは重んじられている。わたしの神こそ、わたしの力」(イザヤ49・5)。

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